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39.「報告」

ふと前を見ると、白くて四角い箱がずらっと並んでいる。

正確には、白くて四角い箱は横に6個並んであり、その列がフロアの奥まで規則正しく並んでいる。 さらにその白くて四角い箱の間には、黒いもじゃもじゃが時々ひょこっと顔を見せている。そしてそのもじゃもじゃには黒だけでなくたまに茶色もある。さらに言うと半分くらいはさらっとしている。つまり、もじゃもじゃはジャングルの如く生い茂っている様子を表した言葉ではなく、ただ白くて四角い箱とは違うんだということを言いたいだけなのだ。なんなら肌色できらっとしているとこもある。この世は多種多様である。

そんなことを考えていたら、始業のベルが鳴った。

ぼーっと前を眺めるのをやめて、目の前の黒い画面に集中しようと思った矢先、右斜め前にある黒いもじゃもじゃの1つが立ち上がった。

目の前を横切っていく黒いもじゃもじゃ。どこに行くんだろうと追っていくと、次第にこちらに近づいてきた。

「おはようございます」

後輩である。挨拶されたのだから当然こちらも「おはよう」と返そうとしたが、それよりも先に、

「え、どうしたの?」

と口走ってしまった。

後輩とは同じチームで仕事をしている。役割としては、後輩が実作業を行い、自分がその作業の検証を行っている。例えば、リーダーから売上データの集計を頼まれたときは後輩がその集計作業を行い、その確認を自分が行ってから提出するといった感じだ。そのため、後輩からはよく作業が完了した報告が来る。また、作業完了報告以外にも、作業の疑問やトラブルなどの報告もくる。つまり、よく報告に来るのだ。

しかし、朝一で報告を受けたことはなかった。確かに今集積作業を実際に行ってはいるが、期限まではまだ1週間もあるし、こんなにも早く報告にくるだろうか。それに今回の作業は関東にある店舗全体の集計作業のため、結構大変なはずだ。なおさらこんなにも早い報告はおかしい気がする。思えば、昨日は自分の方が先に帰った。もしかしたらあの後トラブルでも起きたのだろうか。後輩の顔を見てみる。少し顔がひきつっている。もしかしてほんとに困ったことが起きたのか?正直今トラブルが起きるのは面倒だ。だってコロナなんだもの。

「何か昨日あったの?」

「いや、今朝方の話なんですが」

今朝?どこからかトラブルの連絡を受けたのだろうか。

「通勤中、僕ずっとチャック空いてたみたいです。さっき気付いたんですよ」

「え?」

後輩は笑い出して、

「いやー気付いたときは恥ずかしかったです。でも、コロナであんま人がいなかったので被害は少なかったですね」

「……あそう」

今言われたことを自分の中でを整理してみた。そして思った。

なんだその報告は!