試行錯誤ブログ

試行錯誤してます

50.「通勤風景」

1.

 会社の最寄り駅の改札はショッピングセンターに直結していて、そこを抜けると大通りに出る。その大通りには街路樹が立ち並ぶ。街路樹の種類はベニバナトチノキといって葉はモミジのように手のひら状に茂る落葉樹で、花はその名の通り紅色で1つの枝に四方八方といくつも咲いている。花が咲く枝は天に向かって伸びているため、緑の中から突然赤い棒が伸びていて、まるで木に潜む天狗が鼻だけ出しているように見えたり、木が燃え上がっているようにも見える。5~6月が花の咲き頃で、これを過ぎると果実が生る。その果実を目当てに鳥が集まってくる。この時期になると注意して歩く必要がある。なぜならこの果実を食い荒らした鳥のふんが大量に散らばっているからだ。

 この大通りは片側1車線ではあるが朝から交通量が多く、信号の手前には喫茶店や本屋などが並び、信号を渡ると中層ビルが林立している。そのため人通りも多い。自社へ行くには信号を渡り、大通りに沿って左へと2~3分ほど歩く。この2~3分の道に大量にそれが落ちている。そして、落ちてくる。

 この道の途中にはちょっとした広場があり、そこには一段と大きな木が植えられている。葉は空を覆うように生い茂っている。どうやらこの木に鳥たちが巣を構えているようで、日が沈む頃に通ると、鳥の鳴き声が鳴り響き、この木へと集まってくる。この時間帯はあまり空から何かが落ちてくる心配はない。問題は朝である。鳥の活動はどうやら日の出に始まり、日の入りで終わるみたいで、そして最初の活動がまさにまき散らす行為のようだ。正直、乾いた状態のものならばそこまで気にしないが、出勤時は割と生乾き状態、もしくは新鮮なものもあるため、この道を通る人はみな、下を見ながら歩いている。坂本九の歌を聞きながらこの道を歩いてしまうと、きっと後で更に泣くことになる。

 問題はこれだけではない。鳥の中にも人間と同じく朝に弱いやつがいるらしく、そういったやつがちょうど通勤時間帯にまき散らしてくる。よって、鳴き声や羽音が聞こえたら上を見る必要がある。なんあら昼頃であっても頭に喰らった人を見たことがあるので、常に注意深くいる必要がある。

 日頃、通勤時には雨に降られたくないものである。しかし、この道を知っている人にとっては喜ばしいものでもある。全て洗い流してくれるからだ。大雨の翌日には、きれいさっぱりとしている。普段、果実の赤みが残った白色の汚れで隠されていた石畳のきれいな紋様が見えてくる。

 通勤して間もないころは若干の嫌悪感があったものの、前の人がべっちょりと踏んだことを確認したり、本当は土に運ばれたいところをコンクリの上に運ばれて目的を達成できなかった果実に思いを馳せたり、季節の変わり目もわかるようになったりと徐々にこうした風景を楽しめるようにになってきた。

中でも多くの人が下を見ながら歩いている風景がいつ見ても不思議な光景で、面白い。

 

2.

 スーツを身にまとったその男は朝から喫茶店でくつろいでいた。どうやらビジネスマンではなく学生で、午前中に面接があるため早々に足を運び準備をしていたらしい。しかし、どうにもやる気で出ないようで、コーヒーを啜りながら外の風景をぼんやりと見つめていた。すると異様な光景を見た。喫茶店の目の前の車道を挟んだ向かい側を歩く会社員がみな、下を向いて歩いているのだ。

 

 名前を込田浩二といって、広告系を志望している。理由は楽しいことをしたいから。世間をあっと言わせるようなモノづくりをしたいらしい。だが同時に働きたくないとも思っている。そんな込田は朝から下を向きながら歩く会社員たちの風景を見て一層働きたくないなと思った。と同時に邪な気持ちが浮かんだ。込田はその風景を撮影し、「みーんな下を見ながら歩いている。だから働きたくないんだよな~」というコメントと共にSNSへと投稿した。

 

3.

 今日も大量の鳥のふんを避けながら出社した杉山は、始業時間までスマホを見ていた。するとSNS上で急上昇しているトレンドがあった。それは通勤風景を映したもので、いろんな人がいろんなことをコメントしていた。その写真をよく見ると、自分らしき男が映っていた。鼓動が速くなるのを感じた。その写真を投稿したアカウントを調べると「コミタコージー」といって、トップ画は男がビーチで遊んでいる写真だった。どうやら本人だろう。杉山はその写真をまじまじと見た。

 遠くから自分を呼ぶ声が聞こえる。振り向くと、上司がそれなりのプリントを持って来て「これ、今日の分だから」と渡してきた。「まじすか」と言いながら受け取った。杉山は少し思い悩んだ顔でプリントを数えようとめくり始めた。途中、とあるプリントに目が留まった。

 

4.

 込田は先ほど投稿した写真が思いのほかバズッたことに喜びを隠せていなかった。これ以上、店内でニヤニヤしていると怪しまれそうだが隠すのがやっとのほどだ。最近ではSNSでバズらせた経験の有無を確認してくる企業も多く、これは大変有利になると思った。多少と言うか大いに炎上しているとは思うが、問題ないだろう。面接の時間が近づいてきたので込田は会社へと足早に向かった。

 

5.

「次の方どうぞ」と杉山が会議室の室内からドアに向かって声を出した。ドアが開く。「失礼します」と込田が部屋へ入ってきた。込田は着席し、簡単な自己紹介を終えた。杉山は怪訝そうな表情で込田を見ていた。杉山は広告代理店であるベニーロ株式会社で働いており、若手社員ながらも優秀さを買われ面接官もしている。今日は3次面接で、面接官2人に新卒1人。杉山とその先輩が面接官を担当している。ある程度面接が進んだところで杉山がスマホの写真を込田に見せながら尋ねた。

「この写真を知っていますか」

込田よりも先に先輩が口を開いた。「何この写真?」と。杉山は今日のトレンド急上昇していた写真ですと答え、込田に返答の催促をした。込田は自分が投稿した写真であることを認めた。顔を赤らめながらも鼻を高くしていて、少し自慢げだった。

杉山は話し始めた。「肖像権と言うものを考えたことはありますか。この写真には無数の人が映っています。一人ひとりから掲載の許可を取ったのでしょうか。また、この写真と共に掲載されているコメントはこの会社員の方々を揶揄しているように思われます。どのような意図で投稿したんでしょうか。お聞かせください」

込田は空気が一変して重くなったのを感じ、取り返しのつかないことをしたかもしれないと思った。どう答えようか迷ったところ、またしても口を開いたのは先輩だった。「この働きたくないなってのは本心なの?」

込田はすぐに否定した。

「だよね、だったら今日の面接も辞退するもんね」

込田は笑って肯定した。杉山が口をはさむ。

「本当ですか?では尚更どういう意図で投稿したんですか?第一、アカウントも個人情報満載ですしまるで情報リテラシーが無いように思えます。認めた際にバズらせたことを少し誇っていたようですが決して誇れるものではありませんよ」
「そうか?」

先輩が遮る。

「確かに未熟な面はあるけど炎上とはいえバズらせたことには間違いないんだし、その点は評価した方がいいだろ。情報リテラシーうんぬんはこれから育てればいいよ。」

先輩は写真を見ながらそういうと、杉山が映っていることに気付く。

「あれ、これ杉山じゃない?」

先輩と込田が杉山を見る。杉山はぶすっとして不満げである。

「馬鹿にされた気分だったからあんな質問したのか。それに遂にお前を脅かす存在かもしれないもんな。お前の投稿よりもバズってんじゃないか?だからか」

杉山は大きくため息をついて、

「いや違いますよ。でも一言だけ。僕が下を向いて歩いていたのは地面に大量の鳥のふんがあったからです。先輩だってわかるでしょ?みんなあの道は下を向いて歩いている。だから出社することが嫌ってわけじゃない。仕事はそれなりに楽しんでる。まああの道を通るのは嫌ですけどね。というかもう時間とっくに過ぎてるので終わりましょう。今日はありがとうございます」といって強引に面接を終わらせた。

込田は結果がどうなるか分からずやきもきはしたものの、無事にやり過ごせたことに安堵して部屋を退出した。先輩はしきりに杉山に本心を尋ねたが、杉山は早々に次の新卒を呼び寄せた。

 

6.

 込田はバズらせた手腕を評価され、杉山がいるベニーロ株式会社への入社が決まった。一方、杉山は込田の入社に伴い、退職することを決めた。そして杉山が退職後に始めたのは、会社の地元にある町内会の人と手を組んでベニバナトチノキの完全撤去を訴えることだった。鳥の被害が年々酷くなり、ふんの被害によって町の景観が損なわれるため街路樹を撤去しようというのが主な理由だった。杉山としては、下を向いて歩く会社員を減らして込田のような思い込みや勘違いによる決めつけバズりが生まれないようにするという狙いもあった。

この町の街路樹がベニバナトチノキとなったそもそもの発端はベニーロ株式会社の企画によるものだった。葉の緑色、幹の黄土色、花の紅色の三色を持つこの木を植えることで町をカラフルにし、また花言葉も博愛・贅沢と言うところもあって、この木を植樹して地元を活性化しようと市議会に働きかけたのが始まりだった。そのため町内会の運動はベニーロ株式会社の大きな痛手となりうるものだった。運動の内容によっては自社が鳥害を生み出した原因になりかねないからだ。入社のきっかけになったこともあって込田は町内会の訴えを取り消そうと、会社内でチームを組織し、中心メンバーとして働き始めた。しかし、その画策は失敗し、「ベニーロ株式会社がベニバナトチノキの植樹計画を立案したこと」「ベニーロ株式会社は町内会の意見を取り下げるように裏工作していたこと」が世間にリークされて炎上し、評判を落とし続けて経営難に陥った。ベニバナトチノキの木の実を食した鳥のふんによって、街の景観が汚されているということを市議会も認識していた。そのため市議会の意向としても、町民会の訴えを受け入れようとしていた。しかし、街路樹をなくすことにも異論はあるため違う木に植え替えるという案に落ち着いた。

杉山の目論見通り、ベニバナトチノキは撤去された。一方、代わりに植樹する木の選定は難航していた。どの木を植えれば鳥害に繋がることを避けられるか分からなかったからだ。また、杉山も暗躍していた。今や杉山は鳥と木への恨みが加速して、世界から両者を失くすことに奔走していた。そのため町からは街路樹がどんどん無くなるばかりだった。街路樹の跡地はコンクリートで固められ、灰色の町と化した。鳥の姿も見えなくなった。

それでも、今日もどこかから鳥の鳴き声が聞こえてくる。杉山が歩くと、たびたび鳥のふんの被害に見舞われる。鳥はすべてを見ていた。どういう人物なのかをよく観察していた。今日も鳥は、杉山を狙ってふんを投下する。それは杉山への復讐であり、また木を増やすためでもあった。かつての景色を取り戻そうと頑張っていた。

49.「夢か現実か」

夢か現実か、次第に分からなくなる作品がある。

作品とは想像の賜物ではあるけれど、その発端には色々とあって、まさしく1アイデアを思いついてそこから膨らませたものもあれば、現実にIFを加えて編み出されたり、実体験をもとに作られたものもあるだろう。

夢か現実か混同していく作品の中にも実体験から作られたものがあるはず。

ある日散髪に行ったとき、店内のラジオから長らく活動休止していたアーティストの曲が流れてた。そのアーティストに関して、熱心というわけではないけれど、いっぱしのファンではあった。しかし、そこで流れていたのは知らない曲だった。どうやら活動再開するらしいぞという噂を聞いていたため、もしかしてこれが活動再開1発目の曲かとワクワクしたが、それにしては若干ダサいなと思った。悲しい気持ちになった。

後日、ほんとに活動再開するのか調べてみると何も出てこなかった。新曲も発表していない。では、あの時かかっていた曲はなんなのか。あの日あの時あの瞬間に聞いたあの曲はあのアーティストの歌声だったはず。しかし、日が経つことに段々と自信が無くなり、次第に、もしかして夢だったのかもしれないと思い始めた。散髪するハサミのリズミカルさに心地よくなって見た夢なのかもしれない。

そういえば活動休止に入る前までの数年間に発表された曲はあまり聞いてなかったことを思い出した。もしかしたらここにあるかもしれない。そう思って聞いてみると3曲目でヒットした。あの時聞いたダサい曲だった。現実世界で起こったことだった。すでにこのアーティストから心は離れていたんだなと思った。

 

作品で描かれた出来事は果たして夢なのか現実なのかモヤモヤすることはあるけれど、この散髪での出来事はモヤモヤした。

夢であってほしかった。

夢か現実か混同したが現実と分かってモヤモヤする。

宝くじに当たったが夢だったり、告白成功したかと思ったら夢だったりと言った描写はこういった実体験から作られているのかも。例が悪いから説得力が薄い。

夢であってほしいといえばこんなのもあった。知らないおっさんが自宅にいる夢。

その日は大雨で、帰宅後すぐに傘を玄関に広げて干していた。翌日までに傘が乾いているといいなと思いながら就寝した。すると夢でも帰宅するところから始まっていた。玄関から廊下を抜けてリビングへ向かうと、確か黄緑色のTシャツに、カーボン色のチノパンを履いたおっさんがBBQか掃除をしていた気がする。「あなたは誰ですか」と尋ねると、おどおどとしていたのでそのまま家から追い出した。家にこんな人がいるのはおかしいという感覚はあった。そしてリビングの窓を開いてだだっ広いテラスへと足を踏み出し、外に出た。そこで目が起きた。

最初に確認したのは、テラスの狭さだった。あんなに広くないよなと改めて確認した。玄関へと向かい傘を見ると見事乾いていた。結構濡れていたのにもかかわらず、きれいさっぱりと乾いていたので思わず笑みがこぼれた。傘を閉じ、洗顔して歯を磨き、朝食を済ませ、身支度をした。今日は帰宅が遅くなりそうだからと戸締りを終えて玄関へと向かう。靴を履き、ドアを開ける。その瞬間、不意に思う。鍵を開ける動作をしたかと。開けてないような気がする。靴を履いてそのまま扉を開けたような記憶が頭を占める。全身から血の気が引いていくのを感じる。滝のように雑念が流れていき、鍵が開いていたかもしれないこと、及びそれによって生じる可能性のみを考えることに集中しだす。ひとまず靴を脱いで、リビングへと向かった。夢か現実か確認するために

48.「竜とそばかすの姫」トラウマとクライマックスの関係性が見えなくて

※クライマックスのネタバレをめちゃくちゃしています。

 

「竜とそばかすの姫」を見ました。

中村佳穂さんの歌がよかったです。また声優も初めてながら特に違和感なく、むしろ上手く作品世界に馴染んでいて今後もまた何かしらで見たいなと思いました。ただ疑問に思う展開やセリフが多々あり、次第にそれらが蓄積し、ノイズとなってあまり作品世界に没入出来ませんでした。その中で一番気になったのは、主人公すずが現実世界で歌えなくなった原因であるトラウマシーンと、そのトラウマを払拭するために描かれたであろうクライマックスの関係性がどうにも見えてこないことです。すずの友人であるヒロちゃんよろしく疑問を提示するのでいつか誰かから返答もらえたら。ちなみに1回しかみてないのでたぶんに間違えているかも。

 

いきなりネタバレしますが、すずはあるトラウマを抱えていることが序盤で明らかになります。それは幼少期、母と河川敷へ遊びに行ったときに起きました。河川敷ではBBQなどをしている人で賑わっている中、雨が降ってきたため、氾濫の危険からみんな急いで避難を始めます。しかし、川の中州にすずと同じく低学年ぐらいの子供が取り残され、どうすることも出来ず泣いていました。その様子に気付いたすずの母親はライフジャケットを装着し、川の流れが激しさを増しているにもかかわらず助けに行きます。「お母さん」と必死に叫ぶすず。見守るだけの他の人。このシーンは幾度か描かれ、結果的に中州に取り残された子供は救急隊員に助けられたと分かります。そして、すずの母親はたぶんそのまま川に流されてしまったんだなと想像できます。これがトラウマとなってすずは歌えなくなり、高校時代にはクラスの友達にカラオケを強要された拒否反応として嘔吐までします。すずにとって歌は母親と一緒に遊んだ大切な思い出であり、歌うことでもう母親がいないと強烈に意識してしまって歌えなくなったんだろうと思います。

 

一方、クライマックスでは父親のDVに悩まされる兄弟を助けにすずは遥々東京へと向かいます。この兄弟の関係性はトラウマを抱えた時の状況と酷似しています。

トラウマシーンでは、氾濫の危機に遭う子供と身を挺して守ろうとするすずの母親。

クライマックスでは、DVの危機に遭う弟と身を挺して守ろうとする兄。

実際、兄は弟の身代わりとして暴力を受け、その光景をすずは目撃します。すずの母親が氾濫の被害を子供に代わって受けたことを目撃するとこまで似ていることから、いてもたってもいられず東京へと向かったと思われます。ここから単純に考えると、すずは困っている人をとにかく助けたいんだろうなと考えられます。

 

すずは困っている人を助けられなかったから、次こそは助けたいと思っている説

 

こう考えると、ライブを邪魔されたにもかかわらず竜を心配した理由もわかります。竜は追われており、みんなからも非難されて困っていたからです。困っているように見えたからすずは助けなきゃいけないんじゃないかと思ったんでしょう。

しかし、これをトラウマシーンとクライマックスに当てはめると途端に成立しません。先にクライマックスから考えると、東京に着いたすずはまず弟と出会い、無事を確かめるように抱きしめます。次に現れた兄とも出会って無事を喜びます。その後、兄弟の父親が来ると、2人を庇うように抱きしめ、父親に対抗します。父親から怪我を負わされてもなお立ち向かいます。すずは、この映画で描かれる一連の体験を経て、身を挺して守れるようになったと言えます。やや危険ではありますが。とにかく、困っている2人を身を挺して守れるように成長したとすると、トラウマシーンではそれが出来なかったと言えます。であれば、すずは中州にいた子供とそれを助けに行こうとする母親の2人を助けられず悔やんでいたとなります。しかし、たぶんそうではないでしょう。まず母親は困っているようには見えません。むしろすずが困っていました。だとすればあの頃困っていたすず自身を助けたくてクライマックスのあの行動に出たのでしょうか。ちょっとよくわかりませんが。

 

 

力尽きたのでヒントを求めてパンフレットを読みました。

話は逸れますが、今回のパンフレットは声優陣やスタッフ陣のインタビューだけでなく劇中歌の歌詞もたくさん載っており、またそれぞれが場面写真と共に記載されているため、このシーンの歌かと簡単に思い出せて充実したものになっています。

 

そのパンフレットには、トラウマシーンに言及している文章も記載されていました。

パンフレットは無断転載等禁止と書かれているため、一切何も記載しません。買って読んでいただきたいです。そして読んだ暁にはここまで書いた考察は一切違うなと分かると思います。そして尚更トラウマシーンとクライマックスが繋がらない気がします。しかし、そもそも繋げる必要がないかもしれません。見方が誤っているのかも。どうなんでしょうか。繰り返しになりますが、トラウマシーンとクライマックスの状況が酷似していることからあの時何も出来なかったことにある種悩まされていた。だからこそクライマックスの行動に繋がっていくのだろうと。しかし、母親と一緒に自分も助けに行けばよかったと思っているかと言えばそうではなく、結果的に子供は助かっているし、そもそもパンフレットに書かれている内容からは全然違うんだなとなる。何が論点なのかよくわからなかったので一旦ここで終わりにします。

何かしら浮かんだら追記するかもしれません。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

47.「前途多難」

GW中に引っ越しをした。職場の近くに。

リモートワークによって週2日しか会社に行かなくなり、わざわざ通勤に長い時間をかけることが煩わしくなってきたので決意した。

 

4月の2週目、ひたすらアプリで物件を探していた。

厳選に厳選を重ね、ある1つの物件に目星を付けて内見の依頼を行った。正直、厳選を数日間に渡って行ったため、第一候補だった物件が埋まったりしたことからようやく内見を決めた物件に住みたいところかと言われると違った。でも、不動産屋でもっといいの紹介されるだろうとも思い、また部屋の広さも見たかったため、依頼した。

内見を希望した部屋の大きさは10帖ほどだった。

 

4月の3週目、内見をした。

2日間に分けてそれぞれ違う不動産屋へ行き、合計3件の内見を行った。不動産屋ではまず、自分の希望する条件を言って、10帖と7.3帖の物件を見に行った。

1件目に行った10帖のとこは、先週厳選に厳選を重ねて内見依頼を出した物件だったのだが、間取りがなんか気に入らなかった。玄関から廊下を通って部屋に入ると、左の壁は廊下からそのまま続いており、右側に部屋が広がっていった。部屋の広がり方もいびつで、上から見ると3つぐらいの山が連なっているように見えた。右の山(玄関近く)はクローゼット、真ん中にはベランダ、左はちょっとした空間と崖(玄関から一番奥の壁)に窓があった。寝床はベッドが良くて、大体長さ2メートル、幅1メートル換算で部屋のどこに置こうか模索したけども、一番左の崖に当たるところはベッドがギリギリ入らなさそうで、代わりに置く場所も検討がつかなかった。つまるところ内装のイメージが全くつかなかった。また、正直広すぎるなとも思ったことからやめた。

 

2件目は1Kで7.3帖の部屋だった。1件目よりも内装のイメージは付いたけど、やはり10帖の物件を見てしまった後なので幾分狭く感じてしまった。8帖ぐらいがいいのかもしれない。間取りも真四角で、1辺の中点に玄関へと続く廊下があり、その反対側にベランダがあった。その構造がまた狭さを感じた一因なのかも。真四角な部屋の入口は隅にあってほしい。

 

結局その日は持ち帰り考えますと言って帰った。

 

内見2日目。

不動産屋に行く前に軽く駅周辺を散歩しようとひたすら練り歩いた。満遍なく歩いたことでもう正直全部知った気になった。予定時間の10分前、まだ歩いていない道があり、行きつく先も動産屋近くだろうと踏んで歩いていった。見事違った。むしろ現時点で知りうる中で一番遠い所へと出た。霜降り明星がM-1で披露した漫才にこんなくだりがある。せいやが水泳で溺れかけ頭の中に走馬灯が駆け巡るシーンで、せいやが散布中に「この道に出るのか~」と発見し、「しょうもない人生」と粗品が突っ込むシーン。この掛け合いがめちゃくちゃ好きで、思わずこれを思い出した。しかし、現実はシビアでよて時間に遅刻しそうだった。おまけに雨も降ってきた。地図を調べる時間も惜しくひたすら不動産屋の元へと走った。すでに散歩で歩いてきた道だったため道のりは分かっていたが、のんびりとしたテンションではなく「この道に出ちゃうのかよ!」と驚きと焦りが混ざっていたので最悪だった。

とにかく必死に走った。結果、無事時間通りに着いた。よかった。

 

不動産屋では、昨日内見して感じたことも伝えた。条件を提示していくつか物件を紹介されることを繰り返した結果、たまたま残っていた新築の物件が見つかった。8.2帖だった。部屋の広さだけでなくそのほかの条件にも見合っていたのでその物件を内見することにした。

部屋の間取りはテトリスの駒のようなZの形だった。一番扱いに困るやつ。

部屋に入った感想は7.3帖で感じた圧迫感はなく、また無駄に広すぎるなと思うこともなかった。ちょうどいい感じがした。不動産屋に「内装のイメージは付きますか?」と聞かれ、正直部屋の形がいびつでコンセントの位置も微妙なとこにあるため、イメージなんて何もついてないけど、もうほかに物件なんてないだろうと思い「はい」と応えて住むことに決めた。時期としても新築物件が残ってるのは珍しいらしいし。格安な新築物件は残っているらしいけど。

 

4月の4週目、契約をした。

4月の5週目からGWにかけて、引っ越しをした。

 

引っ越し自体はしたいと思っていたけど、中々食指が動かずだらだらと過ごしていた。でも物件探しのアプリをダウンロードしてから契約、引っ越しまでの速さが我ながら尋常じゃないなと思った。決断からの行動が速い。これからもこの感じを大切にしよう。

 

GWをかけて引っ越しが完了し、部屋で一息つく。

日の光を浴びたいと思い、ベランダへと赴く。部屋は1階のため大した景色なんぞ見えず、向かいにある家の壁が見えるだけ。正面から住宅街が右の方へと連なっている。左を向くと公園がすぐそばにあって子供の走る姿が見える。その向こうに電車が走る姿も見える。下を向くと砂利道に室外機が立ち並んでいる。その室外機の間にカップ麺のゴミがあった。そういえばまだご飯を食べていなかった。と同時に、このゴミは自分よりも階上の人が捨てたんだなと思った。変な人が同じマンション内に住んでいないといいなと思っていたけど、とりあえず平気でポイ捨てする人がいた。ちゃんと処理してくれよ。

眼下に広がる砂利道は、このマンションに住む人しか立ち入り出来ないところであり、正直立ち入る理由もないところではある。自分のせいにされるのは嫌なのでいつか処理しようにも、なぜ自分が処理しないといけないのかと思う。また処理したことでいつだった砂利道に捨てても誰かしら、もしくは1階の人が処理してくれると階上の人が思ってまた捨ててしまうかも。いや、もしかしたらこれを書いてる今もまた新たなゴミを捨てているのかも。とにかく前途多難である。

 

そういえば新卒の時の配属初日も嫌なことがあった。

昼食の時間となり、会議か何かしら終わって自席へと向かうため、階段に続く扉を開けると、その階段は食堂やコンビニへと向かう人でごった返していた。その様子に驚きつつ流れに乗って降りようとしたら、すれ違いで階段を上っていた人が急に振り向いてきた。鬼気迫る顔だった。なぜだか右手を振りかぶっていた。その様子に、もしかしたら殴られるのかもと思った。ほかにも人がいたことから手を降ろし、その人はまた階段を上っていった。原因を探った。たぶんきっと足を踏んでしまったのだろう。そういえば何かモニュッとしたものを踏んだ感触はあった。その人はサンダルだったことからいっそう痛かったのだろう。申し訳ないなと思いつつ怖かった。なんで配属初日からこんな嫌な気分になるんだろうか。前途多難だ。

 

初日は嫌な気分を味わうことが多いのかもと思った。

それでも、なんとか生きてるし会社もなんとかやっていけているので、今のマンションでもどうにか過ごしていけるだろう。

しかし、まだ隣の部屋の住人への挨拶が住んでいない。

こうしたことが前途多難を呼んでいるのかも。ちゃんとしよう。

 

46.「2020年に読んだ本」

今年はコロナ禍で自宅にいることが多くなり本を読む時間も増えたはずだったけど、夜寝る前にしか読まないスタンスは変わらずだったので結局全然読めてない。

なのに毎週末、本屋へ行っては何かしら本を購入してしまうので積読が進んでしまう。

 

今年も面白い本が多かった。いくつか同時並行で読みつつ、面白かったものを最後まで読み切るスタイルだから面白い本が多かったという感想は当たり前だけれども。

年末に一気に書いてるから忘れていることが多々ある。もったいない。

 

ネタバレしながら感想書いた。

15冊目の「わるい夢たちのバザール」が一番わかりやすく書けた、気がする。

 

1.「炎上する君」西加奈子

どうやら足が炎上している男がいるらしく、それを噂に聞いたOL2人が探しに行く話、だった気がする。 ネットでの炎上を描いた話なのかなと思ったら本来の意味で炎上してんのかい!と思った。でもこれもネットの炎上元を検索してみたら…ってのを比喩しているのかもしれない。比喩だと思ったら比喩じゃなかったけど実は比喩みたいな。

 

2.「ツリーライフ」角田光代

箱根にある箱根本箱という「本を読むための専用ホテル」で購入した本。

箱根本箱はエントランスを囲うように巨大な本棚があって、ホームページでもその光景は見てたけど、改めて真っ先に目に入ってくる本棚のその大きさと飾られている本の多さに驚いた。

 

ウェルカムティーを飲みながらホテルの説明を受けて部屋に向かうと、室内にも本がいくつか飾ってあった。旅行をテーマにセレクトされていた。このようにテーマごとにセレクトされた本がエントランスの本棚だけでなく、ホテル内のいろんな所に点在しているらしい。どこにどのようなテーマの本が飾られているのか、このホテルを探検するのもまた楽しかった。

ほんとにいろんな所に本があり、またくつろげるスペースがある。エントランスの本棚の中にも座ったり、寝ながら読めるスペースがあって、他の宿泊者もみんな各々の形で読書に耽っているので、自分も心行くままに本棚の中に寝転んで読んでいた。

 

「ツリーライフ」はエントランス本棚の入口から見て左奥に飾られていた。西加奈子さんによる物語の力を感じる作品のセレクトの1つだった。

おじいちゃんが亡くなったことを契機に、うちには祖先の墓も親戚も何もないことが分かり、そこからルーツを探しにおばあちゃんらと旧満州へと旅立つ話。その自分のルーツを探しに行く話と共に、祖母と祖父がいかにして満州で出会ったかの話が交互に描かれる。

終盤に確か祖母が言う「ここではないどこかに行けば、なにか起きると思ってんだろ」というセリフの説得力と重さが凄かったと当時の日記には書いてある。生まれは日本だが、何か変わるかもと思って満州へと旅立った祖母はそこでひどい目に遭い、命からがら日本へ来るも身寄りもなく、ずっと不幸な目に遭ってきた。その都度誰かの助けは借りるも結局は自分自身の力でどうにかしてきた祖母。その様子を終始描いてからのセリフだったから非常に刺さった。いい本だった。

 

そういえば「箱根本箱」の室内にはベランダと露天風呂もついており、またテレビや時計はなかった。時間など気にせず心置きなく本に没頭できるスペースが整っていた。1泊2日のコースで朝晩はフルコースだった。とても美味しかった。時間を気にせずだったが食事の時間だけは決まっていた。ほんとは室内にも時計は置いてあったかも。 また行きたい。次回に使える割引券を貰ったことを思い出した時にはチケットの有効期限が迫っており、結局使えず仕舞いだった。もったいない。

 

3.「息吹」テッド・チャン

9つの短編集。 「商人と錬金術師と門」「息吹」が面白かった。

「商人~」は特定の時代に飛べるワープゾーンを使って夫の昔の姿を見て結婚当初の気持ちを思い出そうとする話だった気がする。ワープゾーンは世界各地のある店にあって、またワープゾーンも場所ごとによって飛べる世界が違うとか何とかで旅行もしてた気がする。全然覚えてない。でも面白かったのは確か。「TENET」みたいな話でもあった。この作者の「あなたの人生の物語(映画だとメッセージ)」も同じような話だった。これは構造もだけど伝えようとすることも一緒だった。と思う。

悲しい結末が来ると分かっていても、これから何かをやらない理由にはならない、と。

 

4.「ドミノin上海」恩田陸

装丁がいいし、あらすじから群像劇っぽいので滅茶苦茶好みだと思って読んでみたらほんとに面白かったから最高のパターン。本を売り込むためにハードカバー版の装丁はこだわってる はずで、それが好みのものでしかも内容まで好みだと嬉しい。

 

香港を舞台に25人と3匹の動物を主人公にとある1日に起きた大騒動を描いてる。

ペットのイグアナが死んだことで悲しみに耽って映画撮影を中断した映画監督に彷徨うイグアナの幽霊、時間厳守のため200キロ出せる改造バイクによって宅配するバイク便にそれを追う警官、動物園から脱走を図るパンダやただ香港を観光しに来たOL3人など、読み始めは全然関係ないキャラの描写から始まるけど、それらがどんどん交わって想像もしていない展開へとたどり着く。よい。とてもよい。

解説を読むとこれは続編だった。約20年前に「ドミノ」という作品が出ていてそれの5年後を舞台にした作品だった。そっちも早速購入した。

「ドミノ」の方は文庫版を購入したが、文庫版とハードカバー版での違いがあった。ハードカバー版の「ドミノin上海」にはキャラ紹介があって、それは人物の名前だけでなく簡単な紹介と絵が描いてありその世界を想像するのに一役買っている。一方、文庫版の「ドミノ」にはキャラ紹介はなかったが、解説にはハードカバー版には絵付きのキャラ紹介があったと書いてある。文庫版のほうが解説や加筆されてなおハードカバーより安いことが多々あるが、ハードカバー版にしかない魅力もある。だからこれからもハードカバー版を買うだろう。そしてその本の文庫版が発売されたときには、解説や加筆されたことを知って歯ぎしりしながら文庫版も購入するのだ。

 

5.「三体」劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)

普段、アメコミ関係の感想ばかり呟いている人たちがみんな面白いとツイートしていたので買ってみたら大変面白かった。中国発で2000年代に発売されたものの邦訳されたのは最近の本作。

中国の60~70年代に起きた文化大革命で父親を殺された女性の生涯を描いた過去編と、突如世界中の物理学者が自殺しだした現代を舞台に、視界にカウントダウンの数字が見え始めた物理学者がその謎を追う中で、3つの太陽を持つ惑星を舞台にした「三体」というVRゲームを攻略していく話。なにがなんだかだけど後半まで読み進めるとまじかという展開に。ラストはすぐに続編が読みたくなる。

全3部作だが、まだこのときは2作目が発売されておらず久々に早く続編発売されないかなという気分を味わった。ハリーポッターの次回作を待ってた時以来な気がする。

三体とは一体何か、いろいろと作中示唆はされているもののどうにも全容は掴めないまま読み進めていくと、気付いたら作中のあれやこれが衝撃的な展開と共に繋がってきて、クライマックスは壮大な作戦に心躍らされた。そして続編は絶望しか待ってないだろと思いつつも最後に挿入されるエピソードに納得させられ、僅かな希望を持たされた。ネットフリックスでのドラマ化も決まっているのでそちらも楽しみ。

最近、三体のドラマのプロデューサーが毒殺されたと聞いた。物騒すぎる。 

 

6.「カササギ殺人事件」アンソニーホロヴィッツ

2018か2019年に話題になった本。上下2巻で先に上巻だけ買って読んでみた。この判断がとてもよかったと今では思う。上巻を読まない限り絶対に下巻のあらすじを読んではいけない。 そこに大きな仕掛けがあるからだ。

 

舞台はイギリスのどこか田舎町。そこには大きな屋敷があって、そこに住むお金持ちが旅行に出かけている間に雇われているメイドが階段から転落死した。その死を不審に思った町に住むある女性がイギリスでは有名な探偵に相談して、その死の真相に迫っていく。そんな感じだった。

 

この本は一体誰が犯人なのかを考えるミステリーで、こういったものをフーダニットと呼ぶらしい。実際、読み進めていくと怪しい人がたくさん出てくる。自分の中でこの人が謎解きも出来るのが楽しいところなのだがこの本にはどうにも別の違和感がある。それは目次あたりから抱くものであり、また読み進めていくうえでも気付くのだがこの本はどうやらシリーズものらしい。しかもこの本で9作目だ。この本を読み終わったら前のシリーズ、しかも4作目を読みたくなってくる。ひとまず安心してほしいのは今までのシリーズを読んでいなくとも十分楽しめる。そして一切このシリーズについては調べずに読んでほしい。とにかく読んでほしい。そうして上巻を読み終わり、下巻を読み始めるときっとこう思う「あれ、違う本買っちゃった?」と。

もうネタバレしそうだからやめる。というかしている気がする。

面白かった。

 

7.「ドミノ」恩田陸

「ドミノin上海」が面白かったから買いました。 東京駅を中心に、またまた20以上のキャラクターが縦横無尽に駆け巡るとある1日を描いた話。「ドミノin上海」で香港に遊びに行ったOL3人や絶対に時間厳守で届ける宅配便の男、イグアナを飼っている映画監督などが出ていた。初めて読んだはずだけど、なぜか読んだある気がした。なんにせよ面白かった。オーディションに挑む子役たちや東京駅を爆発させようと画策する犯罪グループなどが、いろんなすれ違いを経て次第に1つのところに集まってくる構成が良い。

関係ない人々がある1点に集結していく展開がどうやら好きっぽい。

 

8.「メインテーマは殺人」アンソニーホロヴィッツ

葬儀屋に自分の葬式プランを相談した日の夜に殺された老婦人。果たして、その老婦人は自分が死ぬことを知っていたのだろうか—

カササギ殺人事件が大変面白くて、そしてこのあらすじに心掴まれて購入してあっという間に読み終わった。

この本の主人公はアンソニーホロヴィッツ、つまり作者本人である。ホロヴィッツは実際に刑事フォイルなど多数のドラマの脚本も書いており、刑事ドラマを書く上で参考にするため協力してもらっていた元刑事ダニエル・ホーソーンからある日、自分の話を書いてくれと頼まれる。捜査における取材内容などを事細かく書くことを指示されて出来上がったのが本作。章立てで構成されており、1章は事件当日の模様が描写されているが、あくまで聞いた話として描写されている。犯人側でも被害者側の目線でもなく第3者目線で語られおり、ずっとホロヴィッツが見聞きした話が時系列順に書かれている。回想なんてない。それが新しかった気がする。ミステリーはいろんな人目線で語られるイメージはあるが、ずっと1人目線だった。そして何より面白いのは3章最後に「1章の中にはっきりと犯人を指し示す描写がある」と明言されていることだ。これを読んで何回も1章を読み直したことは言うまでもない。今までの本にもこういった文言はある気はするが、作者自身が主人公であるドキュメンタリーチックな物語だからことなしえる構成である。そんなことを思いつつ1章を何度か読み返す。しかし犯人は全然分からない。まあ1章に出てくる人物は少ないため、目星は付けてはいたものの犯行手口や理由などは全然わからなかった。全く分からないままもういいやとなり、読み進めた。クライマックスで当然犯人が判明するのだが、まさかの目星をつけた人だった。しかしながら殺人を犯した理由などは全然わかってないため、読み進めていく。トリックなどの解説が書かれている。そこで1章も読み返す。ほんとに示唆されている。すごい。この作者はシャーロックホームズの正当な続編であると認められた小説も書いており、フーダニット作品を知り尽くしているらしく、あらゆる技術を取り込んだ新境地とのことでめちゃくちゃ面白かった。おかげで文体も途中変になった。

 

9.「三体Ⅱ 黒暗森林」劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)

発売されてからすぐ購入した。期待以上の面白さだった。あらすじを書きたいけど、あらすじ自体が1巻のネタバレになってしまうため書けない。はがゆい。別に本紹介をするわけでもなく読んだ本の感想を目的に書いているため別に書いてもいいとは思うが、やっぱりかけない。ただめっちゃ面白い。 

 

 

やっぱり誰のためにやってるわけでもないので、ネタバレした感想を書く。

400年後、三体人が地球を奪い取りに攻めてくることになった地球。相手は全人類の言動を監視しているため、うかつに作戦会議も出来ない。

そこで人類は面壁者というアイデアを考えた。面壁者とは、三体人に対する作戦を自分一人で考え、その作戦遂行するにあたって地球上すべてのリソースを使うことが許されている存在である。その発言はすべて作戦とみなされる。

面壁者に選ばれたのは4人。1国の元大統領など、優秀な人材が選ばれてはいるが、主人公のみは学者ではあるもののほか3人と比較したら有名でもないので、戸惑っている。しかし、そんな主人公を三体人は一番に恐れていたー

なんでもないような人が一番恐れられているのが好き。そして面壁者と破壁人の戦いが面白い。破壁人は三体を支持する人の集まりで、面壁者が何を考えているのかを見破る人。ここの対決がサスペンスみたいで面白かった。主人公以外は、破壁人が策を見破ることでその作戦を無効にしようとしていたが、主人公に対して三体は明確に殺そうとしていて、軽度だけど感染力が異様に高いインフルエンザが世界中に蔓延した時、主人公は自分が殺されそうなのを知っているため地下深くに潜っていたものの感染してしまい、主人公は途端に重症を負ってしまう展開はまるでコロナみたいだった。インフルエンザにはある遺伝子のみにーというか主人公ー反応するようになっており、一般人には無害だが、その特定の人には重症をもたらす。コロナも重症や軽症の人がいて、真っ先にこれを思った。話は主人公がそのインフルエンザに罹ったままコールドスリープに入れられて、一旦200年後へと飛ぶ。

現代医学では太刀打ちできないので未来に飛ばそうということだ。このインフルエンザが直せる年代になったら起こそうというので、目覚めたら200年後だった。現代の地球人は未来に対して絶望的だったが、200年で技術が爆発的に進化しており、人類は宇宙軍(正式名称じゃない)を設立していた。

地球は大きく3つに分かれており、地球上の表面に住む人、地球内に住む人、そして宇宙軍に分かれていた。地球の表面は砂漠化していて主人公と同じく過去からコールドスリープしてきた人がこの時代に馴染めず、荒廃はしているものの2000年代の代物が多く残っているこの地に住んでいた。

地球内部は地上から大きな根っこのような建物が生えており、未来人の多くがそこに住んでいた。すごくSFチック。未来ではオンライン会議が当たり前で、この辺りもコロナ禍の未来を予言していたと思わされる。こうした描写の1つ1つが未来の予想すごいなと唸らされた。

宇宙軍は完全に地球から独立しており、1つの国として成していた。しかもそれが3つ存在していた。ある時、地球の近くに三体人が飛ばしてきた水滴のような物体が留まっているのを発見した。これに対して3つの宇宙軍は協力して接近を試みた。ついに水滴に触れた瞬間の描写も好き。1作目から出ている学者だけが人々に警告しながらも接触を試み、ついに触れた時に恐ろしいことが起きる疑惑が確信に変わってすぐさま逃げろと言うももう遅い。あっという間に宇宙軍は壊滅となった。地球人は絶望する。宇宙艦隊を開発したことで三体人にも勝てると思っていたからだ。三体Ⅱの主人公は学者だけど、もう1人軍人も主人公的に描かれている。その軍人の話も面白い。三体が攻めてくるにあたって、諦める雰囲気が漂っていた現代で諦めずに挑む空気作りを行ったり、この軍人もまた200年後に飛んで、そこからの行動が面白かった。困難な事態に陥った時の人間の動き方が納得させられ、またそれぞれのキャラに対しても意外な展開が待っているのがよい。そして2人の主人公それぞれがたった一人で最終決戦に挑むような描写もあって、そこが熱い。特に学者の主人公がたった1人で三体人に立ち向かうシーンは最高。本作は蟻目線で話が始まり、スケールの小さいところから壮大なスケールの話が展開されて、クライマックスはその冒頭の蟻目線とシンクロしながら三体人に立ち向かうシーンはとてもよかった。3作目は2021年春に刊行予定なので楽しみ。

 

10.「逆ソクラテス伊坂幸太郎

5つの短編集。表題作の「逆ソクラテス」が一番好きだった。

「僕は、そうは思わない」この言葉を武器に戦う小学生。ほどよく伏線回収もあって、自分も頑張ろうという気持ちになれて良かった。ほんとによかった。三体に比べて感想が薄いけど。三体の感想もあらすじがほぼ占めてるからそんな変わらないか。

 

11.「星の子」今村夏子

昔読んだときに終始怖い雰囲気が漂っていて、読み終わった後は結局何も救われてないんじゃないかと思った。映画化されるので改めて読んだ。本、解説、誰かの感想、映画を見たうえでの複合的な感想を書いた。

一般的な夫婦の元に次女として生まれた主人公ちひろ。幼少期のちひろは病弱で、それを上司に相談した父親はとある特別な水を貰ってくる。この水で濡らしたタオルで拭くといいんだ。少し怪しげだが、かけがえのない我が子のため、藁をもすがる気持ちで行っていく。するとみるみる内に病気は治っていった。この経験から夫婦共々その特別な水を扱っている団体に没頭していく。そんな家族の元で育ったちひろの高校生までを描いている。基本的には時系列順だが、多くは説明されず、後ほど思い出したかのように綿密に描写されることがある。

最初は装丁がよかったから購入した覚えがある。その後、売っちゃったけど。文庫版で購入した。

改めて読んでみて、家族4人誰にも感情移入した。親にとっては我が子の命を救ってくれたことをきっかけに入信してしまうことは十分あると思う。たまたま今年、兄のとこに子供が生まれた。その子は健康そのものでなによりだが、1歩何かが違えば十分作中の夫婦になりえる可能性もあったんだなと日々思った。今も思ってる。

ちひろの姉はちひろにはどこまでも優しいのだが、怪しい団体にハマっていく両親のことは嫌に思っている。姉は一度、叔父と結託して家にある水をすべて公園の水道水に中身を入れ替えた。叔父がその旨を伝えると両親は激怒し、2度と来るなと家から追い出す。その様子を見た姉は、叔父と一緒に作戦を実行したにも関わらず、包丁を持って叔父に突き立て、早く出て行けと告げる。しかしその後はやっぱり両親に嫌気が差して家出をし、戻ることはなかった。

一方、ちひろは両親と共に怪しい団体のイベントに参加をしていた。しかし、特段信じているわけでない。ただ親がやっているから自分もやっているだけだった。作中、友達2人と先生の車に乗って帰宅を共にすることがあった。その時、ちひろの家の近くの公園でとある夫婦が頭に白いタオルを載せて、そのタオルに水をかけている光景を目撃する。先生は危ないからと車を出ようとするちひろを制する。しかし、その夫婦はちひろの両親だった。両親がどこかへ行くとちひろは車を降りるがそのままどこかへと走り去ってしまう。

Twitterで誰かが「親を馬鹿にされたらそりゃ怒るわ」みたいなことを呟いていた。確かにと思った。だからこそあれだけ嫌悪していた両親を怒らせた叔父にも姉が怒ったんだろうし、姉はその後家出して戻ってくることは無かったが結婚したことなどの連絡は家に入れている。ちひろは家族のことを想っているはわかるし、両親も家族のことは本当は一番に想っていることがクライマックスの描写からもなんとなくわかる。

クライマックスでは教団の合宿に参加したちひろと両親。ちひろと両親はイベントによって離れ離れになる。両親に中々会えないちひろ。これはまだ親離れが出来ないのか、それともちひろにとっては教団の教えは不要なのか。やっと巡り合って3人で星空を見ることに。そこで流れ星を見るが、両親だけが見れるときと、ちひろだけが見れるときがある。両親とちひろの会話が噛み合わない。ここでやっぱりちひろは教団には染まってないんだろうなと思った。

教団で来年の目標を喋るシーンがある。映画ではカットされていたけど、彼女が教団の信者ゆえについてきた金髪の彼氏が喋ったことがよかった。映画は家族愛を重視した結果カットしたのかな。

文庫版の最後には対談が乗っていて、そこで昔、頭にタオルを載せている人を見た時に「河童みたい」と呟いた友達がいるみたいなことを語ってた。その発言が面白くて今回の作品を作ったらしく、その発言が今作の白眉になっていた。映画でもその発言で笑いが起きてて尚更すごい。この発言したキャラがいい。

散文的になった。次は感想を書く上でも何を伝えたいか考えてから書く。

 

12.「昨日、星を探した言い訳」河野裕

舞台は現代日本だけど、目が黒い人と青い人がいて、青い人達は数が少なく、またかつて黒い目の人たちから迫害を受けた歴史を持っている。

そんな環境下で総理大臣を目指す青い目の女子高生。彼女は総理大臣になるからには全人類を愛することに決めている。しかし、たった1人だけ嫌いな男がいる。そんな彼女に唯一嫌われている黒目の男子高校生。その2人が主人公だ。

面白かった。

あらすじ紹介だけで終わっちゃった。

 

13.「魔術はささやく」宮部みゆき

繋がりがなさそうな女性3人が連続して不審死する。

その謎をなぜか追う、鍵を開けることが得意な高校生。

一見、関係なさそうな描写がすべて繋がってくる

最高!

 

14.「その裁きは死」アンソニーホロヴィッツ

今回もこいつが怪しいんじゃないかと思って読み進め、実際にそいつが犯人だったが、トリックなどは一切わからなかった。

レストランにて、「あんたなんかこのボトルで殴って殺してやる!」と言われた男がその晩、ほんとにボトルで殴られ死亡した事件の犯人を捜す話。

面白かった。

 

 

 15.「マイル81 わるい夢たちのバザール1」スティーブン・キング

短編集の第1巻。10個ほどの話があった。どれも読んだ後げっそりする後味の悪さ。しかもどれも種類の違う後味の悪さで、ただただ嫌な目に遭ったやつや人間不信に陥るものまで多種多様だった。

表題作の「マイル81」はアメリカの交通量の少ないマイル81に停車している人を食べる車の話。いろんな人がその車に食べられていく。どのキャラも簡単に人物紹介のエピソードが描かれることによって、感情移入ではないがもうすでに他人ではなくなる。名前と人物像を知ったちょっとした知り合い、顔見知りの隣人になる。顔は想像するしかないけど。そんな人があっという間に車に食べられる。辛い。終盤には4人家族も登場する。尚更つらい。最後はちょっとした「IT」的な展開となる。面白かった。

 

どの作品にもその前に、キングによるちょっとした制作裏話が書かれている。

バットマンとロビン、激論を交わす」では、認知症気味の父親とレストランで食事をとった後、車で帰宅中に前に割り込まれたため、中指突き立てたらその車の運転手にぶん殴られる話である。そう裏話にも書いてある。大まかな筋をしてなお面白かった。

中指を突き立てた後、そんなことをしなきゃよかったと振り返って後悔する1文がある。その後、前の車から降りたその人物は見るからに人を殴りそうだと1ページにも渡って描写している。こちらとしてはもういっそ早く殴ってくれよとなる。この焦らしがすごいストレスになっていて、かつ怖さに拍車をかけてきた。そしていざ殴るシーンになると、それはまたえらく生々しくエグイぐらいにボコボコにされる。人間には必ず良い面と悪い面があると思うようにしてるし、ライムスター宇多丸も「あんなんでも誰かにとって大切な人」と歌っている。しかし、この殴ってくるやつには絶対良い面なんて無いと思わせて来るし、こんな奴のこと大切な人なんていんのかよってくらい瀕死に追い込んでくる。やばい。やばかった。

ちなみにバットマンとロビンは、主人公親子の関係性を表現しただけである。

 

他にも、近いうちに死ぬことになる人の名前が表れる砂浜を描いた「砂丘」やひどい悪口によって死に追いやる子供の幽霊を描いた「悪ガキ」、町の少女を殺した罪で死刑となった男がもしかしたら無罪かもしれないと疑う保安官を描いた「死」、同じ人生を何度も繰り返す「アフターライフ」が面白かった。

 

砂丘」はこないだ見た志村けんのコントにも通じるところがあった。散々フッといてそっちか!と思わせるコント。なんのこっちゃと思うだろうけど。

盲腸か何かで入院してくるダチョウ倶楽部肥後。そこには老人の志村けんが入院していた。志村は言う、「そのベッドはしょっちゅう人が入れ替わるんだ」と。僕もすぐ退院する予定ですと肥後が答えると、「みんな死んでるんだよ」と志村は言う。ただの盲腸ですよと肥後は答えるも志村は「みんなそう言うんだよ」と。

その後も「お前で13人目だ」や「白い注射器ならいいけど赤い注射器はもう末期だ」などと不吉なことをどんどん告げる。

そんな2人の元に注射を打ちに医者がやってくる。肥後は白い注射器で安心する。

一方、志村の方は赤い注射器を打たれようとしていた。

砂丘」もこんな感じだった。

「死」もこんな感じだったかも。人間には必ず良い面があると思ったら。。。

結論として「マイル81」「砂丘」「死」が面白かった

いくつかネットで無料で読めるらしい。

 

 

終わり!!!

45.「2019年に読んだ本」

2019年に読んだ本 

川上弘美「大きな鳥にさらわれないよう」

カズオ・イシグロの「わたしを離さないで」をさらにファンタジーにさせた感じで、主人公の行く末を見つつ、この世界はどういった感じなのだろうと想像する楽しさがあった。気がする。 

 

②オードリー若林正恭「ナナメに夕暮れ」

ひねくれからの脱却を果たしていた。 

 

長嶋有「私に付け足されるもの」

短編集だった。よかった。気がする。

 

宮沢賢治銀河鉄道の夜

中盤が残されてないからこそ想像力がより膨らまされていろんな作品が作られているんだろう。 

 

スティーブン・キング「11/22/63」

長かった分印象に残ってる。1963年11月22日はケネディ大統領が殺された日。

時は現代。主人公の住む町のバーにある日突然、1958年へと通ずる穴が現れた。そのバーの主人からケネディ暗殺を阻止してくれと頼まれた主人公は本当に過去を変えられるのかをまず実験してみることに。そのことを描いた上巻が面白かった。ケネディ暗殺まで5年もあるため当然何かしら生活の手段を考える必要があって、非常勤講師として生徒との交流や同僚との恋愛を描いた中巻も面白かった。そして下巻は着実に迫ってくるケネディの暗殺に対し、一体だれが犯人なのかを突き止めていくサスペンスでそれも面白かった。タイムトラベル自体にも仕掛けがあって、主人公が最終的に大きな決断を迫られるし、最後のセリフが心にきた。

スティーブン・キングは描写が細かすぎるし登場人物も多くて人間関係複雑だから大変なイメージだけど、割と読みやすかった。ペニーワイズが出てくるITは読むの大変。ずっと怖いし。ペニーワイズが人を殺すまでが長く、じっとりとしていて早く殺してくれよ!となるがたまに失敗するから死なないんかい!とかなる。

 

三田誠広いちご同盟

全然覚えてないけど上手いこと絡んでいくな~と思った気がしなくもない。でも何か不満に覚えた描写もあった気がしなくもない。 

 

⑦倉井眉介「怪物の木こり」

終盤の時系列トリックは良かった。 

 

瀬尾まいこ「そして、バトンは渡された」

これは自分の話だと思ったが、違った。

主人公が親を転々としていく話。4組くらい?どの親も優しかった。

エピローグのある親から描かれた話が一番好きだった。 

 

白石一文「ほかならぬ人へ」

 香水のせい。

 

湊かなえ「花の鎖」

親子三代。

 

⑪金子薫「壺中に天あり獣あり」

巨大な迷路から出れなくなって、そこでホテル経営を始める話。 

 

⑫ナイツ塙宣之「言い訳」

面白かった。 

 

大島真寿美「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」

表紙がいいなと思って買ったら後日直木賞取ってた。

徐々に歌舞伎に人気を取られ始めていた時代に生きた人形浄瑠璃の作者の話。途中で語られる創作論がよかった。目の前にある風景を一つ一つ文字にしていくんだ的な。 

 

恩田陸「祝祭と予感」

蜜蜂と遠雷」の後日談や前日譚など。 

 

⑮ブレンディみかこ「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」

よかった。が、中学生にしては出来すぎると思ってしまった。しかし、勉強しよう。 

 

⑯塩田武士「罪の声」

グリコ森永事件を題材にした小説。あまりその事件知らないけども。

事件から数十年経っており、100~150Pまで何も糸口が掴めず正直いつ面白くなるんだろうなとは思った。でもようやく犯人に少しずつ近づいてきたころからは引き込まれ、クライマックスは辛すぎるぜの嵐だった。映画もよかった。

 

 ※敬称略

 

映画はまだ見たシーンが記憶に残るけど、小説は文字しかなく、読んだときに想像した光景もなんとなく思い出すけど映画よりはっきりした映像ではなくモヤモヤしたものばかりなので、本の感想は読んだ直後に言語化しないと意味がないなとこれを書いて思った。忘れていたとしても血肉にはなってることを願いつつ、さっさと感想書いた方がいい。

 

 

44.「キングオブコント2020の感想」

コントの感想だけ

 

滝音

コンビ自体初見。

黙々とラーメンを食べる男に対して、気前よく接客する店員。正直、飲食店で店員に絡まれるのはあまり好みではないけれど、このコントの店員はそこまで嫌悪するものではなくておすすめの食べ方紹介してくれたりと親切だった。それをずっと無視して食べるお客。それでも健気に話しかける店員に段々と感情移入して、逆に客に対しては少しは会話しろよと気持ちが募ってきたところで「大食い選手権なのよ」はめちゃくちゃ面白かった。確かに食べるペースが速いし、話してる余裕なんて尚更ない。この序盤1分ぐらいの様子が一気に納得できるものに変わって上手い設定だなと思った。その後も店員の行動や発言に独特なワードでツッコむのは面白かった。ただ、会話だけが繰り広げられてて、こんな広いステージの中、中央で喋るだけなのはもったいないなと思ってしまった。大食いなのになんでこんな喋ってるんだろうというか、もっと大食い中ならではのドタバタが見たかったかも。時間制限もあるだろうから、より早くより多く喰いたい客とちゃんと接客したい店員のバトルが見たかった気がしなくもない。独特なワード突っ込みを織り交ぜたバトル主軸のコントが見たかったかも。でも面白かった。

 

GAG

何回か見た。

何回か見たけどやっぱり面白かった。

河川敷?かどこかでフルートの練習をしていたら、たまたま通りかかった中島美嘉に見てもらうことになり演奏すると、フライを取りにきた外野手と中島美嘉がぶつかって精神が入れ替わってしまう。以降、フルートを吹くたびに誰かと誰か、もしくは何かが入れ替わるコント。

いつもは3分ぐらいで終わるけど、今回は5分でいつもより多くの展開が見れた。よりシャッフルされて混沌してた。どうシャッフルされるのかが楽しみなんだけども、シャッフルされるだけだったのが物足りなさを感じてしまったかも。シャッフルという主軸以外の笑いが他2人はシャフルに気付かないぐらいで、セリフのやり取りなどの笑いがもうちょっとあるとよかったかも。てぐすがいいのか悪いのかはよくわかんない。でもまあ面白かった。

 

ロングコートダディ

筋肉隆々の先輩に仕事の指導を受ける新人のコント。

「筋肉すごいですね」「頭悪いからさ」のやり取り好き。頭悪いゆえに端的に説明しようと心がけているからこそ細かい説明なんてせず答えのみ伝えたのか、自分の中じゃ筋が通っているが相手にはそれだけでは伝わらないことを想像できるほど頭良くないからなのか、みたいな想像も出来ちゃう井上さんのキャラの良さ。その後も「段ボール初めてか?」のやり取りも好き。会話していくことで冒頭の「頭悪いからさ」の真相がわかり、オチでだからあの筋肉なのかとコント全体がより面白くなる感じもよかった。さらに新人に「頭悪いですね」とストレートに言われてもどこまでも優しい井上さんがいい。また、謎の上げ下ろしの作業にたっぷりと時間を使うのもすごい。強いて言えば井上さんを最後の最後にまた見たかった。が、面白かった。

 

空気階段

霊媒師が依頼人のおばあちゃんの霊を取り込もうとしたらラジオの周波数と合ってしまって、そのままラジオを再生してしまうコント。名前も見た目も口調もどれも胡散臭く(タンスのコントの口調というか瀬川瑛子のモノマネをどうしてもキングオブコントでやりたかったのかな)、いざ霊を降ろすとコミュニティFMのラジオを受信したとか言ってよくわかんない会話を始めて怪しさ満点だが、ラジコで再生はじめたらマジで受信してたことが分かったのが面白かった。そこからどんどん霊を降ろそうとするもひたすらラジオだけが再生され、一瞬おばあちゃんが出るも取り逃がしてしまったり、実は霊媒師がそのラジオのリスナーだったと分かったり、いろんな要素が絡み合ってくのがよかった。面白かった。

 

ジャルジャル

競艇の会場で歌うことになり、そこではたくさんの野次が飛んでくるだろうからそれに慣れるために今から練習しようというコント。野次ワクチンという言葉で一発でわからせて来るのが凄い。野次もいろんなパターンがあって面白いし、終盤になるとなぜかほんとに社長としては喋らないでくれみたいな気持ちが生まれ、裏切らないでくれと、「野次に決まってるやん」のセリフが聞きたいんだと思ってたからこそ最後まで野次に徹底してくれたのがよかった。それに短い時間の中で「知らん」「誰やねん」「下手くそ」の流れを作るのもすごいし、短時間でいろんなパターンをこちらに覚えさせて笑いにつなげてるのがめちゃくちゃすごい。リズミカルでずっと聞きたくなるし、どんどんサイクルが短くなり畳みかけてくるから笑いが増幅するしで、これ以前の4組も面白かったけど爆発力が凄かった。面白い

 

・ザ・ギース

長年お世話になった先輩を見送るためにハープ演奏し、そのお返しとして切り絵するコント。キングオブコントでハープ演奏に切り絵も出来てやりたいこと出来て良かったなあみたいな気持ちになった。いつの間にか出場者最年長になっててびっくり。そしてコント終わりに一番かましてたのが高佐だったのも面白かった。でもハープの登場が全然受けてないの衝撃だし、逆に笑った。いろんなとこで小出しにしてたハープとか切り絵がついにきた!と思ったのに。ハープ情報もやや受けでだめなのかあと思った。まあでも演奏始めたら受け始めて良かった。優勝はしたいんだろうけど、やりたいことやれて満足したのでは。面白かった。

 

うるとらブギーズ

陶芸家が気に入らない壺を割っていくが、いいと思ったの壺も割ってしまうコント。 

リズムよく壺を割っていくのがいいし、壺を「いい!」と評価した後にも割ってしまってそれに気付く演技が上手かった。いいと思った壺を割らないようにする工夫が多種多様でよかった。二人の演技力だけで持っていくし、実物が無くても見てる人の想像力を働かせるのがコントの一種の良さでもあるけどどうせならほんとに壺を割ってほしかった感がある。でも面白かった。

 

ニッポンの社長

ケンタウロスの高校生がそのケンタウロスであることの悩みを吐露していたら、顔だけ牛の女性と出会って恋に落ちるコント。吐露も部分だけ見ると面白いけどもどう展開していくかわからなくて、顔だけ牛女性が出てきたら曲が流れ始め、ひたすら見つめ合うところで恋には落ちたんだろうとなるけど、再びどう展開するんだろうと引き付けられてからの歌い始めるという流れが面白かった。見つめ合う時間の長さがよかった。高校生のパートが終わって女性のパートに移ると、牛の叫びしかできないのも面白いし、その姿を見て幻滅するのかと思いきや全然そうではなくてそのままキス。それにょって女性が歌えるようになるが高校生は馬の叫びしかできなくなるのもよかった。流れがいい。ただ、馬の叫びで終わってしまったのが少しだけ物足りなさがあったかも。馬の叫びを見て、女性はどう思ったのかが見たかったかも。いらないかな。面白かった。

 

・ニューヨーク

披露宴にて新郎の友人まさおが練習してきたという一芸を見せるが、それが行き過ぎたパフォーマンスだったコント。最初に楽器の空演奏でザ・ギースが本当にハープ演奏をしてしまった以上ウケも評価も微妙になるんじゃないかと思ったけど、巨大な岩が出てきたぐらいからめちゃくちゃ面白かった。女子十二楽坊の曲にのせて巨大な岩を口で持ったり、インパクトを腹やこめかみに押し付けたりしてる時に、前半にフッてた「この後奥さんの友達がハッピーサマーウエディングやる」や「たった2か月で習得したの?」が効いてきて最高に笑った。そしてなによりまさおって名前がよかった。こんなことをやりそうな謎の説得力があった。演芸の合間合間のセリフも面白い。変な移動方法や本番はこれからですと言って巨大な岩運んできたり。本筋の演劇がどんどんエスカレートしつつ、合間も面白くて好きだった。当然ツッコミもいい。最後の最後の千羽鶴も笑った。面白かった。

 

ジャングルポケット

 男に会社の機密情報を喋らすために娘の情報を言って脅すが、男の知らない情報まで出てくるコント。面白いけど審査員のコメントにあるように確かに置いてかれた感がある。情報も早々に追えなくなったし、リズミカルで笑うタイミングもわかるけど、おたけのフリの部分がそもそもあまり聞き取れない時があって、次第にこいつらの目的もわからなくなり笑いどころが分からなくなった。男の知らない情報が出てくるタイミングも早かったかもしれない。冒頭はもう少し丁寧にいってほしかったかも。最初からテンポ早めでそのまま最後まで行ってしまった感じ。序盤ゆっくりからどんどんエスカレートしてほしかったかも。序盤にもっと脅すために娘の情報を言ってることを描いてほしかった。中盤に会社の情報を吐けと改めて言うけど、ほんとに脅すつもりあるのかと思ってしまった。あくまで脅すために言ってる情報がそいつよりも知りすぎている面白なのに、その情報単体の面白さがメインになってしまったのがよくなかったのかも。でも面白かった。

 

空気階段

 定時制高校で授業中の手紙のやり取りによって恋愛を育んでいくコント。このあらすじだと笑いの部分が分かんないけど、もぐらのキャラがやばかった。春の訪れを感じさせるようなMから始まり、綺麗な女装をしているかたまりが後ろの席の男に恋をしているとナレーションで説明があって登場するもぐらのインパクトがやばすぎる。何言ってるのか1ミリも分からない。その後、手紙のやり取りがあって、その手紙もナレーションされるのだが、もぐらのナレーションは手紙でも何言ってるのか分からない。何いってるのか分からないけどめちゃくちゃ笑える。すごい。そして次第にもぐらの言ってることが分かってくる。すごい。もぐらがトイレに行く下りもやばい。こんなやばい奴だけど、かたまりの熱が冷めることは無い。ニッポンの社長のコントもだけど、はたから見たらやばいけども本人にとっては何もやばくなく、そういったものというか普通に好きなんだと描くコントが多くなった気がする。だとしたらその変な奴を見て笑ってるおれらはどうなんだ。しかし、そもそもコントなんだから笑ってもいいのか。あくまでそのキャラは変とは思わないキャラを描くことで多様性を描き、あらゆる人を肯定している。ただそれはある意味悪意を巧妙に隠している気もする。わからん。とりあえず、もぐらのセリフが意味わからないのに笑えてすごかった。でも最後に1回だけもぐらのセリフで別に滑りはしてないけど笑いに繋がってないのがあって、それがもったいなかったかも。もぐらは終始何を言ってるのか分からないキャラなのに、なぜか次は何を言うんだろうと期待が高まっていて、だからこそ最後のオチ前のセリフで笑えなかったのがもったいない気がした。でも面白かった。

 

・ニューヨーク

髪を切りすぎてしまってそれを隠すために帽子をしていたヤクザの子分が、兄貴に帽子取ってみろよと言われたものの取るタイミングを見失って取り辛くなってしまい、お互いのプライドを守るために言い争うコント。しょうもないことをアウトレイジ風にやってて面白かった。こういうことあるし。お互いが最後まで譲らないのもいいし、舞台奥の日本刀を使うのもいい。舞台にあるものを無駄なく使うシチュエーションコント精神みたいな感じでいいし、実際に発砲するのもよかった。段々とエスカレートする感じもいい。いいしか言えない。面白かった。

 

ジャルジャル

 夜、とある会社に窃盗に入ったものの、子分がなぜかタンバリンを持っててバレないように頑張るコント。正直、面白けど優勝するか微妙なコントまた持ってきたのかよと思った。面白いけど。いくつものパターンを作るコントがいいと思うけど、やっぱりキングオブコントで何かしらぶっこみたい気持ちがあるのかな。ハープ演奏しかり発砲しかり。最後、子分を残して逃げようとするもやっぱりかわいいから一緒に逃げようと戻ってくるのがよかった。面白かった。

 

総じて面白かった。