試行錯誤ブログ

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46.「2020年に読んだ本」

今年はコロナ禍で自宅にいることが多くなり本を読む時間も増えたはずだったけど、夜寝る前にしか読まないスタンスは変わらずだったので結局全然読めてない。

なのに毎週末、本屋へ行っては何かしら本を購入してしまうので積読が進んでしまう。

 

今年も面白い本が多かった。いくつか同時並行で読みつつ、面白かったものを最後まで読み切るスタイルだから面白い本が多かったという感想は当たり前だけれども。

年末に一気に書いてるから忘れていることが多々ある。もったいない。

 

ネタバレしながら感想書いた。

15冊目の「わるい夢たちのバザール」が一番わかりやすく書けた、気がする。

 

1.「炎上する君」西加奈子

どうやら足が炎上している男がいるらしく、それを噂に聞いたOL2人が探しに行く話、だった気がする。 ネットでの炎上を描いた話なのかなと思ったら本来の意味で炎上してんのかい!と思った。でもこれもネットの炎上元を検索してみたら…ってのを比喩しているのかもしれない。比喩だと思ったら比喩じゃなかったけど実は比喩みたいな。

 

2.「ツリーライフ」角田光代

箱根にある箱根本箱という「本を読むための専用ホテル」で購入した本。

箱根本箱はエントランスを囲うように巨大な本棚があって、ホームページでもその光景は見てたけど、改めて真っ先に目に入ってくる本棚のその大きさと飾られている本の多さに驚いた。

 

ウェルカムティーを飲みながらホテルの説明を受けて部屋に向かうと、室内にも本がいくつか飾ってあった。旅行をテーマにセレクトされていた。このようにテーマごとにセレクトされた本がエントランスの本棚だけでなく、ホテル内のいろんな所に点在しているらしい。どこにどのようなテーマの本が飾られているのか、このホテルを探検するのもまた楽しかった。

ほんとにいろんな所に本があり、またくつろげるスペースがある。エントランスの本棚の中にも座ったり、寝ながら読めるスペースがあって、他の宿泊者もみんな各々の形で読書に耽っているので、自分も心行くままに本棚の中に寝転んで読んでいた。

 

「ツリーライフ」はエントランス本棚の入口から見て左奥に飾られていた。西加奈子さんによる物語の力を感じる作品のセレクトの1つだった。

おじいちゃんが亡くなったことを契機に、うちには祖先の墓も親戚も何もないことが分かり、そこからルーツを探しにおばあちゃんらと旧満州へと旅立つ話。その自分のルーツを探しに行く話と共に、祖母と祖父がいかにして満州で出会ったかの話が交互に描かれる。

終盤に確か祖母が言う「ここではないどこかに行けば、なにか起きると思ってんだろ」というセリフの説得力と重さが凄かったと当時の日記には書いてある。生まれは日本だが、何か変わるかもと思って満州へと旅立った祖母はそこでひどい目に遭い、命からがら日本へ来るも身寄りもなく、ずっと不幸な目に遭ってきた。その都度誰かの助けは借りるも結局は自分自身の力でどうにかしてきた祖母。その様子を終始描いてからのセリフだったから非常に刺さった。いい本だった。

 

そういえば「箱根本箱」の室内にはベランダと露天風呂もついており、またテレビや時計はなかった。時間など気にせず心置きなく本に没頭できるスペースが整っていた。1泊2日のコースで朝晩はフルコースだった。とても美味しかった。時間を気にせずだったが食事の時間だけは決まっていた。ほんとは室内にも時計は置いてあったかも。 また行きたい。次回に使える割引券を貰ったことを思い出した時にはチケットの有効期限が迫っており、結局使えず仕舞いだった。もったいない。

 

3.「息吹」テッド・チャン

9つの短編集。 「商人と錬金術師と門」「息吹」が面白かった。

「商人~」は特定の時代に飛べるワープゾーンを使って夫の昔の姿を見て結婚当初の気持ちを思い出そうとする話だった気がする。ワープゾーンは世界各地のある店にあって、またワープゾーンも場所ごとによって飛べる世界が違うとか何とかで旅行もしてた気がする。全然覚えてない。でも面白かったのは確か。「TENET」みたいな話でもあった。この作者の「あなたの人生の物語(映画だとメッセージ)」も同じような話だった。これは構造もだけど伝えようとすることも一緒だった。と思う。

悲しい結末が来ると分かっていても、これから何かをやらない理由にはならない、と。

 

4.「ドミノin上海」恩田陸

装丁がいいし、あらすじから群像劇っぽいので滅茶苦茶好みだと思って読んでみたらほんとに面白かったから最高のパターン。本を売り込むためにハードカバー版の装丁はこだわってる はずで、それが好みのものでしかも内容まで好みだと嬉しい。

 

香港を舞台に25人と3匹の動物を主人公にとある1日に起きた大騒動を描いてる。

ペットのイグアナが死んだことで悲しみに耽って映画撮影を中断した映画監督に彷徨うイグアナの幽霊、時間厳守のため200キロ出せる改造バイクによって宅配するバイク便にそれを追う警官、動物園から脱走を図るパンダやただ香港を観光しに来たOL3人など、読み始めは全然関係ないキャラの描写から始まるけど、それらがどんどん交わって想像もしていない展開へとたどり着く。よい。とてもよい。

解説を読むとこれは続編だった。約20年前に「ドミノ」という作品が出ていてそれの5年後を舞台にした作品だった。そっちも早速購入した。

「ドミノ」の方は文庫版を購入したが、文庫版とハードカバー版での違いがあった。ハードカバー版の「ドミノin上海」にはキャラ紹介があって、それは人物の名前だけでなく簡単な紹介と絵が描いてありその世界を想像するのに一役買っている。一方、文庫版の「ドミノ」にはキャラ紹介はなかったが、解説にはハードカバー版には絵付きのキャラ紹介があったと書いてある。文庫版のほうが解説や加筆されてなおハードカバーより安いことが多々あるが、ハードカバー版にしかない魅力もある。だからこれからもハードカバー版を買うだろう。そしてその本の文庫版が発売されたときには、解説や加筆されたことを知って歯ぎしりしながら文庫版も購入するのだ。

 

5.「三体」劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)

普段、アメコミ関係の感想ばかり呟いている人たちがみんな面白いとツイートしていたので買ってみたら大変面白かった。中国発で2000年代に発売されたものの邦訳されたのは最近の本作。

中国の60~70年代に起きた文化大革命で父親を殺された女性の生涯を描いた過去編と、突如世界中の物理学者が自殺しだした現代を舞台に、視界にカウントダウンの数字が見え始めた物理学者がその謎を追う中で、3つの太陽を持つ惑星を舞台にした「三体」というVRゲームを攻略していく話。なにがなんだかだけど後半まで読み進めるとまじかという展開に。ラストはすぐに続編が読みたくなる。

全3部作だが、まだこのときは2作目が発売されておらず久々に早く続編発売されないかなという気分を味わった。ハリーポッターの次回作を待ってた時以来な気がする。

三体とは一体何か、いろいろと作中示唆はされているもののどうにも全容は掴めないまま読み進めていくと、気付いたら作中のあれやこれが衝撃的な展開と共に繋がってきて、クライマックスは壮大な作戦に心躍らされた。そして続編は絶望しか待ってないだろと思いつつも最後に挿入されるエピソードに納得させられ、僅かな希望を持たされた。ネットフリックスでのドラマ化も決まっているのでそちらも楽しみ。

最近、三体のドラマのプロデューサーが毒殺されたと聞いた。物騒すぎる。 

 

6.「カササギ殺人事件」アンソニーホロヴィッツ

2018か2019年に話題になった本。上下2巻で先に上巻だけ買って読んでみた。この判断がとてもよかったと今では思う。上巻を読まない限り絶対に下巻のあらすじを読んではいけない。 そこに大きな仕掛けがあるからだ。

 

舞台はイギリスのどこか田舎町。そこには大きな屋敷があって、そこに住むお金持ちが旅行に出かけている間に雇われているメイドが階段から転落死した。その死を不審に思った町に住むある女性がイギリスでは有名な探偵に相談して、その死の真相に迫っていく。そんな感じだった。

 

この本は一体誰が犯人なのかを考えるミステリーで、こういったものをフーダニットと呼ぶらしい。実際、読み進めていくと怪しい人がたくさん出てくる。自分の中でこの人が謎解きも出来るのが楽しいところなのだがこの本にはどうにも別の違和感がある。それは目次あたりから抱くものであり、また読み進めていくうえでも気付くのだがこの本はどうやらシリーズものらしい。しかもこの本で9作目だ。この本を読み終わったら前のシリーズ、しかも4作目を読みたくなってくる。ひとまず安心してほしいのは今までのシリーズを読んでいなくとも十分楽しめる。そして一切このシリーズについては調べずに読んでほしい。とにかく読んでほしい。そうして上巻を読み終わり、下巻を読み始めるときっとこう思う「あれ、違う本買っちゃった?」と。

もうネタバレしそうだからやめる。というかしている気がする。

面白かった。

 

7.「ドミノ」恩田陸

「ドミノin上海」が面白かったから買いました。 東京駅を中心に、またまた20以上のキャラクターが縦横無尽に駆け巡るとある1日を描いた話。「ドミノin上海」で香港に遊びに行ったOL3人や絶対に時間厳守で届ける宅配便の男、イグアナを飼っている映画監督などが出ていた。初めて読んだはずだけど、なぜか読んだある気がした。なんにせよ面白かった。オーディションに挑む子役たちや東京駅を爆発させようと画策する犯罪グループなどが、いろんなすれ違いを経て次第に1つのところに集まってくる構成が良い。

関係ない人々がある1点に集結していく展開がどうやら好きっぽい。

 

8.「メインテーマは殺人」アンソニーホロヴィッツ

葬儀屋に自分の葬式プランを相談した日の夜に殺された老婦人。果たして、その老婦人は自分が死ぬことを知っていたのだろうか—

カササギ殺人事件が大変面白くて、そしてこのあらすじに心掴まれて購入してあっという間に読み終わった。

この本の主人公はアンソニーホロヴィッツ、つまり作者本人である。ホロヴィッツは実際に刑事フォイルなど多数のドラマの脚本も書いており、刑事ドラマを書く上で参考にするため協力してもらっていた元刑事ダニエル・ホーソーンからある日、自分の話を書いてくれと頼まれる。捜査における取材内容などを事細かく書くことを指示されて出来上がったのが本作。章立てで構成されており、1章は事件当日の模様が描写されているが、あくまで聞いた話として描写されている。犯人側でも被害者側の目線でもなく第3者目線で語られおり、ずっとホロヴィッツが見聞きした話が時系列順に書かれている。回想なんてない。それが新しかった気がする。ミステリーはいろんな人目線で語られるイメージはあるが、ずっと1人目線だった。そして何より面白いのは3章最後に「1章の中にはっきりと犯人を指し示す描写がある」と明言されていることだ。これを読んで何回も1章を読み直したことは言うまでもない。今までの本にもこういった文言はある気はするが、作者自身が主人公であるドキュメンタリーチックな物語だからことなしえる構成である。そんなことを思いつつ1章を何度か読み返す。しかし犯人は全然分からない。まあ1章に出てくる人物は少ないため、目星は付けてはいたものの犯行手口や理由などは全然わからなかった。全く分からないままもういいやとなり、読み進めた。クライマックスで当然犯人が判明するのだが、まさかの目星をつけた人だった。しかしながら殺人を犯した理由などは全然わかってないため、読み進めていく。トリックなどの解説が書かれている。そこで1章も読み返す。ほんとに示唆されている。すごい。この作者はシャーロックホームズの正当な続編であると認められた小説も書いており、フーダニット作品を知り尽くしているらしく、あらゆる技術を取り込んだ新境地とのことでめちゃくちゃ面白かった。おかげで文体も途中変になった。

 

9.「三体Ⅱ 黒暗森林」劉慈欣(りゅう・じきん/リウ・ツーシン)

発売されてからすぐ購入した。期待以上の面白さだった。あらすじを書きたいけど、あらすじ自体が1巻のネタバレになってしまうため書けない。はがゆい。別に本紹介をするわけでもなく読んだ本の感想を目的に書いているため別に書いてもいいとは思うが、やっぱりかけない。ただめっちゃ面白い。 

 

 

やっぱり誰のためにやってるわけでもないので、ネタバレした感想を書く。

400年後、三体人が地球を奪い取りに攻めてくることになった地球。相手は全人類の言動を監視しているため、うかつに作戦会議も出来ない。

そこで人類は面壁者というアイデアを考えた。面壁者とは、三体人に対する作戦を自分一人で考え、その作戦遂行するにあたって地球上すべてのリソースを使うことが許されている存在である。その発言はすべて作戦とみなされる。

面壁者に選ばれたのは4人。1国の元大統領など、優秀な人材が選ばれてはいるが、主人公のみは学者ではあるもののほか3人と比較したら有名でもないので、戸惑っている。しかし、そんな主人公を三体人は一番に恐れていたー

なんでもないような人が一番恐れられているのが好き。そして面壁者と破壁人の戦いが面白い。破壁人は三体を支持する人の集まりで、面壁者が何を考えているのかを見破る人。ここの対決がサスペンスみたいで面白かった。主人公以外は、破壁人が策を見破ることでその作戦を無効にしようとしていたが、主人公に対して三体は明確に殺そうとしていて、軽度だけど感染力が異様に高いインフルエンザが世界中に蔓延した時、主人公は自分が殺されそうなのを知っているため地下深くに潜っていたものの感染してしまい、主人公は途端に重症を負ってしまう展開はまるでコロナみたいだった。インフルエンザにはある遺伝子のみにーというか主人公ー反応するようになっており、一般人には無害だが、その特定の人には重症をもたらす。コロナも重症や軽症の人がいて、真っ先にこれを思った。話は主人公がそのインフルエンザに罹ったままコールドスリープに入れられて、一旦200年後へと飛ぶ。

現代医学では太刀打ちできないので未来に飛ばそうということだ。このインフルエンザが直せる年代になったら起こそうというので、目覚めたら200年後だった。現代の地球人は未来に対して絶望的だったが、200年で技術が爆発的に進化しており、人類は宇宙軍(正式名称じゃない)を設立していた。

地球は大きく3つに分かれており、地球上の表面に住む人、地球内に住む人、そして宇宙軍に分かれていた。地球の表面は砂漠化していて主人公と同じく過去からコールドスリープしてきた人がこの時代に馴染めず、荒廃はしているものの2000年代の代物が多く残っているこの地に住んでいた。

地球内部は地上から大きな根っこのような建物が生えており、未来人の多くがそこに住んでいた。すごくSFチック。未来ではオンライン会議が当たり前で、この辺りもコロナ禍の未来を予言していたと思わされる。こうした描写の1つ1つが未来の予想すごいなと唸らされた。

宇宙軍は完全に地球から独立しており、1つの国として成していた。しかもそれが3つ存在していた。ある時、地球の近くに三体人が飛ばしてきた水滴のような物体が留まっているのを発見した。これに対して3つの宇宙軍は協力して接近を試みた。ついに水滴に触れた瞬間の描写も好き。1作目から出ている学者だけが人々に警告しながらも接触を試み、ついに触れた時に恐ろしいことが起きる疑惑が確信に変わってすぐさま逃げろと言うももう遅い。あっという間に宇宙軍は壊滅となった。地球人は絶望する。宇宙艦隊を開発したことで三体人にも勝てると思っていたからだ。三体Ⅱの主人公は学者だけど、もう1人軍人も主人公的に描かれている。その軍人の話も面白い。三体が攻めてくるにあたって、諦める雰囲気が漂っていた現代で諦めずに挑む空気作りを行ったり、この軍人もまた200年後に飛んで、そこからの行動が面白かった。困難な事態に陥った時の人間の動き方が納得させられ、またそれぞれのキャラに対しても意外な展開が待っているのがよい。そして2人の主人公それぞれがたった一人で最終決戦に挑むような描写もあって、そこが熱い。特に学者の主人公がたった1人で三体人に立ち向かうシーンは最高。本作は蟻目線で話が始まり、スケールの小さいところから壮大なスケールの話が展開されて、クライマックスはその冒頭の蟻目線とシンクロしながら三体人に立ち向かうシーンはとてもよかった。3作目は2021年春に刊行予定なので楽しみ。

 

10.「逆ソクラテス伊坂幸太郎

5つの短編集。表題作の「逆ソクラテス」が一番好きだった。

「僕は、そうは思わない」この言葉を武器に戦う小学生。ほどよく伏線回収もあって、自分も頑張ろうという気持ちになれて良かった。ほんとによかった。三体に比べて感想が薄いけど。三体の感想もあらすじがほぼ占めてるからそんな変わらないか。

 

11.「星の子」今村夏子

昔読んだときに終始怖い雰囲気が漂っていて、読み終わった後は結局何も救われてないんじゃないかと思った。映画化されるので改めて読んだ。本、解説、誰かの感想、映画を見たうえでの複合的な感想を書いた。

一般的な夫婦の元に次女として生まれた主人公ちひろ。幼少期のちひろは病弱で、それを上司に相談した父親はとある特別な水を貰ってくる。この水で濡らしたタオルで拭くといいんだ。少し怪しげだが、かけがえのない我が子のため、藁をもすがる気持ちで行っていく。するとみるみる内に病気は治っていった。この経験から夫婦共々その特別な水を扱っている団体に没頭していく。そんな家族の元で育ったちひろの高校生までを描いている。基本的には時系列順だが、多くは説明されず、後ほど思い出したかのように綿密に描写されることがある。

最初は装丁がよかったから購入した覚えがある。その後、売っちゃったけど。文庫版で購入した。

改めて読んでみて、家族4人誰にも感情移入した。親にとっては我が子の命を救ってくれたことをきっかけに入信してしまうことは十分あると思う。たまたま今年、兄のとこに子供が生まれた。その子は健康そのものでなによりだが、1歩何かが違えば十分作中の夫婦になりえる可能性もあったんだなと日々思った。今も思ってる。

ちひろの姉はちひろにはどこまでも優しいのだが、怪しい団体にハマっていく両親のことは嫌に思っている。姉は一度、叔父と結託して家にある水をすべて公園の水道水に中身を入れ替えた。叔父がその旨を伝えると両親は激怒し、2度と来るなと家から追い出す。その様子を見た姉は、叔父と一緒に作戦を実行したにも関わらず、包丁を持って叔父に突き立て、早く出て行けと告げる。しかしその後はやっぱり両親に嫌気が差して家出をし、戻ることはなかった。

一方、ちひろは両親と共に怪しい団体のイベントに参加をしていた。しかし、特段信じているわけでない。ただ親がやっているから自分もやっているだけだった。作中、友達2人と先生の車に乗って帰宅を共にすることがあった。その時、ちひろの家の近くの公園でとある夫婦が頭に白いタオルを載せて、そのタオルに水をかけている光景を目撃する。先生は危ないからと車を出ようとするちひろを制する。しかし、その夫婦はちひろの両親だった。両親がどこかへ行くとちひろは車を降りるがそのままどこかへと走り去ってしまう。

Twitterで誰かが「親を馬鹿にされたらそりゃ怒るわ」みたいなことを呟いていた。確かにと思った。だからこそあれだけ嫌悪していた両親を怒らせた叔父にも姉が怒ったんだろうし、姉はその後家出して戻ってくることは無かったが結婚したことなどの連絡は家に入れている。ちひろは家族のことを想っているはわかるし、両親も家族のことは本当は一番に想っていることがクライマックスの描写からもなんとなくわかる。

クライマックスでは教団の合宿に参加したちひろと両親。ちひろと両親はイベントによって離れ離れになる。両親に中々会えないちひろ。これはまだ親離れが出来ないのか、それともちひろにとっては教団の教えは不要なのか。やっと巡り合って3人で星空を見ることに。そこで流れ星を見るが、両親だけが見れるときと、ちひろだけが見れるときがある。両親とちひろの会話が噛み合わない。ここでやっぱりちひろは教団には染まってないんだろうなと思った。

教団で来年の目標を喋るシーンがある。映画ではカットされていたけど、彼女が教団の信者ゆえについてきた金髪の彼氏が喋ったことがよかった。映画は家族愛を重視した結果カットしたのかな。

文庫版の最後には対談が乗っていて、そこで昔、頭にタオルを載せている人を見た時に「河童みたい」と呟いた友達がいるみたいなことを語ってた。その発言が面白くて今回の作品を作ったらしく、その発言が今作の白眉になっていた。映画でもその発言で笑いが起きてて尚更すごい。この発言したキャラがいい。

散文的になった。次は感想を書く上でも何を伝えたいか考えてから書く。

 

12.「昨日、星を探した言い訳」河野裕

舞台は現代日本だけど、目が黒い人と青い人がいて、青い人達は数が少なく、またかつて黒い目の人たちから迫害を受けた歴史を持っている。

そんな環境下で総理大臣を目指す青い目の女子高生。彼女は総理大臣になるからには全人類を愛することに決めている。しかし、たった1人だけ嫌いな男がいる。そんな彼女に唯一嫌われている黒目の男子高校生。その2人が主人公だ。

面白かった。

あらすじ紹介だけで終わっちゃった。

 

13.「魔術はささやく」宮部みゆき

繋がりがなさそうな女性3人が連続して不審死する。

その謎をなぜか追う、鍵を開けることが得意な高校生。

一見、関係なさそうな描写がすべて繋がってくる

最高!

 

14.「その裁きは死」アンソニーホロヴィッツ

今回もこいつが怪しいんじゃないかと思って読み進め、実際にそいつが犯人だったが、トリックなどは一切わからなかった。

レストランにて、「あんたなんかこのボトルで殴って殺してやる!」と言われた男がその晩、ほんとにボトルで殴られ死亡した事件の犯人を捜す話。

面白かった。

 

 

 15.「マイル81 わるい夢たちのバザール1」スティーブン・キング

短編集の第1巻。10個ほどの話があった。どれも読んだ後げっそりする後味の悪さ。しかもどれも種類の違う後味の悪さで、ただただ嫌な目に遭ったやつや人間不信に陥るものまで多種多様だった。

表題作の「マイル81」はアメリカの交通量の少ないマイル81に停車している人を食べる車の話。いろんな人がその車に食べられていく。どのキャラも簡単に人物紹介のエピソードが描かれることによって、感情移入ではないがもうすでに他人ではなくなる。名前と人物像を知ったちょっとした知り合い、顔見知りの隣人になる。顔は想像するしかないけど。そんな人があっという間に車に食べられる。辛い。終盤には4人家族も登場する。尚更つらい。最後はちょっとした「IT」的な展開となる。面白かった。

 

どの作品にもその前に、キングによるちょっとした制作裏話が書かれている。

バットマンとロビン、激論を交わす」では、認知症気味の父親とレストランで食事をとった後、車で帰宅中に前に割り込まれたため、中指突き立てたらその車の運転手にぶん殴られる話である。そう裏話にも書いてある。大まかな筋をしてなお面白かった。

中指を突き立てた後、そんなことをしなきゃよかったと振り返って後悔する1文がある。その後、前の車から降りたその人物は見るからに人を殴りそうだと1ページにも渡って描写している。こちらとしてはもういっそ早く殴ってくれよとなる。この焦らしがすごいストレスになっていて、かつ怖さに拍車をかけてきた。そしていざ殴るシーンになると、それはまたえらく生々しくエグイぐらいにボコボコにされる。人間には必ず良い面と悪い面があると思うようにしてるし、ライムスター宇多丸も「あんなんでも誰かにとって大切な人」と歌っている。しかし、この殴ってくるやつには絶対良い面なんて無いと思わせて来るし、こんな奴のこと大切な人なんていんのかよってくらい瀕死に追い込んでくる。やばい。やばかった。

ちなみにバットマンとロビンは、主人公親子の関係性を表現しただけである。

 

他にも、近いうちに死ぬことになる人の名前が表れる砂浜を描いた「砂丘」やひどい悪口によって死に追いやる子供の幽霊を描いた「悪ガキ」、町の少女を殺した罪で死刑となった男がもしかしたら無罪かもしれないと疑う保安官を描いた「死」、同じ人生を何度も繰り返す「アフターライフ」が面白かった。

 

砂丘」はこないだ見た志村けんのコントにも通じるところがあった。散々フッといてそっちか!と思わせるコント。なんのこっちゃと思うだろうけど。

盲腸か何かで入院してくるダチョウ倶楽部肥後。そこには老人の志村けんが入院していた。志村は言う、「そのベッドはしょっちゅう人が入れ替わるんだ」と。僕もすぐ退院する予定ですと肥後が答えると、「みんな死んでるんだよ」と志村は言う。ただの盲腸ですよと肥後は答えるも志村は「みんなそう言うんだよ」と。

その後も「お前で13人目だ」や「白い注射器ならいいけど赤い注射器はもう末期だ」などと不吉なことをどんどん告げる。

そんな2人の元に注射を打ちに医者がやってくる。肥後は白い注射器で安心する。

一方、志村の方は赤い注射器を打たれようとしていた。

砂丘」もこんな感じだった。

「死」もこんな感じだったかも。人間には必ず良い面があると思ったら。。。

結論として「マイル81」「砂丘」「死」が面白かった

いくつかネットで無料で読めるらしい。

 

 

終わり!!!