試行錯誤ブログ

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22.「映画を見に来ただけなのに」

 

柳瀬

大松

 

茂木                     劇場スタッフ(チケットもぎり)

梶                        劇場スタッフ(販売員)

 

タクミ                 加子の彼氏

坂登 加子          タクミの彼女

 

影山                     劇場スタッフ(清掃ほか)

 

              こじんまりとした、町の映画館のロビー。

中央奥にはチラシ置き場やパンフレットが並び、その右手にレジ。

下手手前には入場口がある。横にはトイレに通じる道も。

上手手前に大きい観葉植物があり、その奥にはゴミ箱、さらにその奥は映画館の入り口や従業員の休憩室などへ続いている。

 

              「第一章 柳瀬のヒマの潰しかた」

 

柳瀬が下手奥から入ってくる。

 

柳瀬       僕はいま映画館に来ています。ここは映画館のロビー。今日この後、ここでとある事件が起きます。それに関していろんな人がいろんなことを言うでしょう。しかし、真相を知るのは僕ただ一人。

 

              電話が鳴る。

 

柳瀬       事件はこの電話から始まりました。

 

              柳瀬、電話に出る。

 

柳瀬       もしもし大松?え、遅れそう?もうすぐ始まるよ?おれ予告から見たいんだけど・・・わかったよ

 

              柳瀬、電話を切る。

              茂木が受付に来る。

              茂木はアナウンスを始める。

 

茂木       これより18時上演、芝浜ワークレボリューションの入場を開始いたします

柳瀬       僕は今日友達の大松と映画を見る約束をしていたんですが、どうやら遅れるとのこと。大松のチケットを持っているのは僕なので、ここで彼を待たないといけなくなりました。なので、暇つぶしにチラシを見ることにしました。

 

              柳瀬、チラシ置き場を物色。

 

柳瀬       当然ここにはたくさんのチラシがあるんですが、なんとこんな分厚い冊子も置いてあったんですね。僕はこれを見て思いました。やばくね、と。これが無料かもしれないってことですね。値札らしきものは置いてないしチラシは普通自由に取っていい、故にこれもタダ!と思って遠慮なく頂きました。

 

              柳瀬、そのパンフレットを鞄の中へと入れる。

              柳瀬の携帯が鳴る。

 

柳瀬       もしもし?え、まじ?間に合いそうにない!?どうすんの?・・・わかった

 

              柳瀬、電話を切る。

 

柳瀬       まだまだつかないとのことです。それで申し訳ないからスタッフにチケット預かってもらえないかと言われました。予告も見たい僕としては、当然聞きに行きました

 

              茂木が受付に現れる。

              柳瀬、受付へ

 

柳瀬       すみません、「芝浜ワークレボリューション」なんですけど、一緒に見ようとしてる友達が今遅れてて、それでここってチケットを預かって貰えたりとか出来ますか?

茂木       ご友人様のチケットのお預かりですね?

柳瀬       そうです!

茂木       無理です

柳瀬       普通に断られました。そりゃそうですよね、すみません

 

              柳瀬、受付から離れてLINEする

 

柳瀬       ダメだった、と

 

              LINEが鳴る。

 

柳瀬       (LINEを見て)え!?・・・思えばこのLINEこそが全ての始まりだったかもしれません。さっきあの電話が始まりとか言いましたが。いや、あの電話があったからこそこのLINEなのか?とにかく、彼から来た内容はこういうものでした。「どこかにチケット隠しといてくれないか?」

 

              「映画を見に来ただけなのに」とタイトルが映る。

              M。

              チケットの隠し場所を探す柳瀬

 

柳瀬       チケットを隠せと言われた僕は、1箇所候補を見つけ(観葉植物にサス)行動に移しました

 

柳瀬、観葉植物の元へ。茂木の隙を見て、観葉植物の鉢植えの下にチケットを滑り込ませる。そしてその箇所を近距離、中距離から写メする。

              茂木、柳瀬の様子を怪しむが結局気付かない。

 

柳瀬       隠し場所の写真も送ったところで、1つの考えがよぎりました。やっぱ待った方がいいのかなと。上映時間からもう15分、予告編も終わっていよいよ本編も始まりそうなので迷いなくチケットを隠しましたが、やっぱり友達として待った方がいいのかなと。なのでチケットを回収して待つことにしました。

 

              いつのまにか観葉植物付近にタクミと加子がいた

 

柳瀬       人がいたのでやっぱ入ることにしました

 

              柳瀬、劇場へ入る。

 

 

              「第二章 大松はチケットを取りたいだけ」

 

              大松がロビーに走ってくる。

              周りはそれに反応。

              大松はそれに気づき、何でもないですよといった表情でやり過ごそうとする。

 

大松       どうも、大松です。今ロビーをパッと見て、どうやら柳瀬はいないらしいことを確認しました。あいつマジで入ったのか!となると隠し場所は

 

タクミ   飲み物いる?

加子       あ、ほしい!

タクミ   じゃあ買いにいこっか

大松       お、ちょうど誰もいなくなるっぽいので良かったです

タクミ   何がいい?

加子       じゃあコーラで!

タクミ   おけ!

加子       ありがと!

 

              タクミのみ売店

              加子はスマホをいじりだす。

 

大松       2人で行けや!

 

              以降、大松と加子のセリフの裏で次のことが行われる。

              梶がレジに現れる。

              梶は先ほど柳瀬が持って行った山積みのパンフレットの上に「700円」と書かれた値札を置く。

              タクミは梶から飲み物を購入する。

 

大松       一人で待っててもヒマだろ。なんで待つんだ。あれか、浮気相手とLINEしてんのか!なに考えてんだあいつは!

加子       私は今、あの人なんかこっち見てる、キモっと思ってます。実はあの人がここに来たときからずっと視線を感じていました。それのせいで恐怖を感じちゃってだから動けずにいました。まるで蛇に睨まれた鼠のように。なんであの人はこっちを見てくるんでしょうか

大松       早くどかねえかな

加子       怖いです私

 

              タクミが帰ってくる。

              と、同時に清掃係の影山がロビーの掃除に来る。

 

タクミ   お待たせ~

加子       ありがとう!!

大松       帰ってくんな!

加子       あのさ、ちょっといいかな?

タクミ   なに?

加子       なんかさっきからあの人がこっちをジロジロと見てくるんだけど

タクミ   あの人?

 

              両者、目が合う。

 

大松       ん?

タクミ   てめえ何こっち見てんだよ!

大松       え?

タクミ   なんだよやる気かよこの野郎!

大松       うわ、やべえ奴だったやべえ奴だった!

タクミ   あんま見てっと土踏まずで口塞いで呼吸できなくすっぞ!

大松       独特な攻撃!

タクミ   おら!

 

              タクミ、ほんとにやろうとする。

 

大松       ほんとにやる気かよ!

タクミ   さっきからジロジロみやがってよお!

大松       キャラ変わりすぎだろ!

梶          すげえ

加子       タクミくん!?

茂木       お客様どうされました?

タクミ   あ、いえ、大丈夫です。(大松に)すみません、取り乱しました

大松       取り乱しすぎだろ!てか、こわ!!好青年に戻った!こわ!

タクミ   ですが、彼女も怖い思いを抱いてるんですよ

大松       は?

 

              影山、このあたりで観葉植物下のチケットを拾う。

              加子はそれに対して「すみません」などと言ってちょっとどき、

              その後はひたすらタクミの様子を見守っている。

 

タクミ   先ほどからあなたの視線を感じるとのことで

大松       ああ、そういうことですか。情緒どうなってんだ

タクミ   ですので、ぶん殴りにいこうかと

大松       いかれた発想してんな!もういい大人なのに!

タクミ   なんで、こっち見てたん?

大松       なんで訛ったんだよ!怖いだろ!いや、あそこに落とし物しちゃったんですよ

タクミ   落とし物?

大松       はい。でも、人がいるから、どうしようかなーと

タクミ   ああ、なるほど

大松       はい

 

              影山、このあたりではけていく。

 

タクミ   そっか~なるほどなるほど。いや、それなら先に言ってくださいよ!

大松       聞く気なかったろ

タクミ   なんか人いたら拾いにくいですもんね!すみません、失礼しました。では、どうぞ。彼女にもそう言っておきます

大松       ありがとうございます

タクミ   加子!この人別にやばい人じゃなかったよ!

加子       え?

大松       やばそな奴はお前

タクミ   なんかこの辺で落とし物しちゃったみたいで

加子       落とし物?なに?

タクミ   なんだ?なんですか?

大松       チケットです

タクミ   チケットなんですか。チケットだって

加子       チケット?

大松       はい

タクミ   じゃあどうぞ!てかチケット落ちてます?

大松       え?

 

              大松、チケットを探すが見当たらない。

 

タクミ   どこらへんですか?

大松       いや、確かここらへんに・・・

加子       ・・・さっき清掃の人が回収してたような

大松       清掃の人!?いまどこに?

加子       向こうの方に

 

              大松、影山がはけたほうへ急いで向かう。

 

タクミ   そういうの早く言ってあげないと

加子       ねえ、チケット落としたならすぐ拾わない?

タクミ   何疑ってるの?まあ確かにそうだけど、あ、それか、あれじゃない?あれ、そのーいつの間にかのやつだよ

加子       いつの間にか紛失してたのに気づいて、遠くからここに落ちてたのに気付いた?

タクミ   そう!そのパターン!

加子       ふーん

 

              大松、戻って来る

 

大松       チケットありました!すみません、ありがとうございます!

タクミ   ほら、ほんとにチケットじゃん

加子       (首をかしげる

大松       もうこんな時間か。じゃあありがとうございました!

 

              大松、劇場内へ。

 

タクミ   てか、おれらも早く入んないと!

加子       ああ、そうだった

 

              タクミ、加子、劇場内へ。

 

 

              「第三章 いつだって気付くのは梶」

 

              梶が茂木の元へいく。

 

梶          茂木さん!いまの人たちやばくないすか?てかあの彼氏!あの人やばすぎでしょ!なんか土踏まずで口抑えつけようとしてましたよ!全然意味わかんないんですけど!

茂木       声大きいって!聞こえちゃうから!

梶          いや、もう大丈夫ですよ!聞こえてないですってバカそうだったし

茂木       理由になってないから

梶          てか冷静に土踏まずで相手の口塞ぐってなんなんすかね?

茂木       知らないよそんなの。

梶          靴脱ごうとしてましたよ

茂木       そうね

梶          つまりは蹴りじゃなくてほんとに塞ごうとしてたんすよ?土踏まずで

茂木       なんかの映画で見たのをマネしたくなったんじゃない?

梶          どんな映画だよ!え、知ってますそんな映画?

茂木       わかんない、ミステリーしか見ないもん

梶          ああそうですよね。じゃあこの謎解決してくださいよ

茂木       なんの謎??

梶          なぜ土踏まずで口塞ぐという発想が生まれたのか

茂木       えー、得意技だったんじゃない?喧嘩とか、それか格闘技習ってて

梶          得意技って!いや、確かに彼女がいる前ですもんね。速攻で倒しておれは強いんだと証明したいはずです。ああいう喧嘩っ早い土踏まずは

茂木       なにそのあだ名

梶          すぐに自分の得意技をやって倒したいはずなんですよ土踏まずってやつは

茂木       土踏まずの何しってんの?ああ、なんか変な質問になっちゃった

茂木       でも思うんです、普通に蹴ろや!

茂木       私に言われても

梶          やるにしても相手を寝ころばしてからとどめの一撃でって感じじゃないんすかね?それを初手で、相手がまだ平然と立っているとこでやるって戦略的にもバカすぎるっていうか避けられたらどうするんだろう

茂木       そんなことより片付けはすんだの?仕事中だよ?

梶          ・・・あ、なんかお腹空いてきた。もう休憩入りません?

茂木       え?ああ、もうそんな時間か

梶          影山さん呼んできます

 

              梶、影山を呼びに行く。

              茂木、もぎったチケットの掃除をする。

              梶、影山がすぐに帰ってくる。

 

梶          影山さん呼んできましたー

影山       じゃあ休憩行ってきな!その間見張ってるから

梶          ありがとうございます!

茂木       すみません、いつもありがとうございます

 

              茂木、梶、去る。

              影山は適当な椅子に座り、腕を組んで真正面を見る。

              壁にかかっている時計が18時から19時半に進む。(時間進む演出)

              その間、影山は瞬きもせず、目を見開いたまま客席を見ている。

              茂木、梶が帰ってくる。

 

梶          影山さん!お疲れ様です!

茂木       影山さんありがとうございました!

影山       特段変なことは何もなかったよー

茂木       了解です!!

影山       それじゃあおつかれー

茂木・梶              おつかれさまです

 

              影山、去る。

 

茂木       それじゃあもうすぐ上映終了だから、それの前に片付けないと

梶          はい!

 

              茂木はもぎり付近を、梶は売店の整理をし始める。

              そのうち梶がチラシやパンフレットの数を数えだす。

              梶、パンフレットの残り数と売り上げ数が合わないことに気付く。

              何度も数える梶。しかし、数は合わない。

 

梶          ん!?

茂木       なに?どうしたの?

梶          いや・・・

茂木       絶対なにかあったでしょ

梶          ・・・パンフレットが一冊足りてないです

茂木       え、どういうこと?

梶          店頭にあるパンフレットが一冊無いんですよ!

茂木       ほんとに?

梶          はい

茂木       それって冗談じゃすまされないよね?

梶          ・・・こわ

茂木       いや、真面目に。もう一回数えてみて

梶          はい

 

              梶、パンフレットの枚数数えるが一部足りてない。

 

梶          やっぱ足りてないです。

茂木       なんかその辺に紛れ込んでないの?

梶          (見て)ないです!

茂木       もっと探してよ

 

              茂木、梶、一緒に売店周りを探すが、速攻顔を挙げて

 

茂木       ないじゃん

梶          ないです

茂木       どうすんのこれ?

梶          どうしましょう

茂木       休憩中に盗まれたとか・・・

梶          茂木さん、「見開きの影山さん」がいたんすよ?たぶんここで腕組んでずっと見張ってたんだからないですよ

茂木       たしかに。値札はずっと置いといたんだよね?

梶          ・・・はい

茂木       え?

梶          置いてありました。え、これっておれの監督責任みたいな感じですか?

茂木       もちろん

梶          うわ

茂木       監視カメラは?

梶          今、なんにも映りません

茂木       そうだった!画面真っ暗で使い物ならないんだった。倉庫には全部あったんだよね?

梶          ・・・昼飯食べる前に確認しました。全部ありました

茂木       じゃあ、ほんとに売店のパンフレットが一冊無くなっただけ?

梶          はい

 

              もぎりのとこからベルが聞こえる。

 

茂木       あ、とりあえずもうすぐお客さん出てくるから準備して

 

              茂木は入り口付近へ

              梶はゴミ箱を入り口付近に持ってくる。

 

梶          茂木さん

茂木       なに?梶君

梶          お客さんの中に万引き犯いるんじゃないんすか?

茂木       ・・・

 

 

 

              「第四章 犯人はこの中にいます」

 

              タクミとカコが出てくる。

              茂木はタクミらから飲み物を受け取り、ゴミ箱へ

              茂木、梶「ありがとうございました」などと言って二人を見送る。

 

加子       面白かったねー

タクミ   ほんと面白かった

加子       主人公が走るシーンとかすごいドキドキしちゃった

タクミ   確かにあのシーン良かった

加子       ねー、あ、この後どうする

タクミ   実は近くのレストラン予約してる、もうこの後すぐ

加子       え、ほんと?

 

              柳瀬、大松出てくる。

              加子・タクミはそれに合わせ、観葉植物付近に移動し、

「どこのレストラン?」などと話してる。

 

大松       なんか全体的にアクションシーン微妙じゃなかった?特に走るシーン

柳瀬       確かにカット割りとかイマイチだった、テンポ悪い

大松       臨場感がないんだよなー

茂木       みなさん聞いてください

他          ??

梶          茂木さん?

茂木       犯人はこの中にいます!

大松・タクミ       「は?」・加子     「なんの?」・柳瀬              「・・・」

梶          ミステリー映画の見過ぎでしょ

茂木       みなさん落ち着いてください!協力していただきたいだけです!

大松       あんたが一番騒いでいるからね

加子       すみません、えっと何か起きたんですか?協力って?

茂木       今日、この映画館で不審な人物を見かけた方はいらっしゃいますか?

加子       不審な人物?

大松       あんたが一番不審だけどね

タクミ   おれら特にそういう人見かけてないんでもう行ってもいいですか?このあと予定入ってて

茂木       どなたも見かけませんでしたか?

タクミ   見てないっす

柳瀬       あの、これって怪しい人を見たというか、この4人の中で誰が怪しいかってことですよね?

タクミ   は?

加子       どういうことですか?

茂木       いや、決してそういうわけでは

柳瀬       でも最初確かこの中に犯人がいますって言ってませんでした?

茂木       そうでした

大松       認めるのはや

加子       そろそろちゃんと言ってください。ここで何があったんですか?

タクミ   レストランに行きたい

茂木       実は先ほど、こちらにあるパンフレットが一冊紛失していることが発覚いたしました

柳瀬       !

茂木       当然私どもの過失ではあります。しかし、売り場や在庫を探してみても見つからず、帳簿の計算も間違いございません。そのため、盗難の被害にあった可能性も考えられます

加子       え!

大松       じゃあなに?結局この中に万引き犯がいるってことかよ

タクミ   あのさあ!監視カメラとかねえの?

柳瀬       !!(驚き、周囲を見渡す)

茂木       監視カメラは、あります

柳瀬       (監視カメラらしきものを見つけ驚嘆)

タクミ   じゃあそれ見れば映ってるでしょ

梶          実は今、なにも映らないんですよね

タクミ   は?

茂木       動くは動くんだよね?

梶          はい。でも画面真っ暗なんで、実質ないようなもんです

タクミ   なんだよ使えねえな

柳瀬       (安堵)

加子       倉庫とかにもほんとないんですよね?

茂木       なかったんだよね?

梶          ・・・ええ、はい、なかったです

大松       じゃあこの中に犯人いんじゃん

柳瀬       !!・・・すみません、今パンフレットの上に値札置いてますけど、これって最初からありました?もしかしたら、もし、値札置いてなくて、それ見てタダだと勘違いしたとか・・・

茂木       値札も最初から置いてありました、ね?

梶          はい、置いてあります

柳瀬       ほんとですか?

梶          はい、どうかしましたか?

柳瀬       いや、なにも

 

              サス。

 

柳瀬       お久しぶりです。万引き犯です。僕は今こう思ってます。やばくね?と。無罪を主張しようにも、値札が置かれていなかったことを認めない店員。このままだとマジで捕まっちゃう恐れがあるので、僕は人知れずにパンフレットを元に戻すことを決意しました

 

              地明かり。

 

茂木       皆様、当館の状況は分かっていただけましたでしょうか?それでお手数ですが、何か不審な動きを見かけた方は、教えていただけると・・・

タクミ   おれら見てないんでもう行っていいすか?このあと用事あるんですよ

大松       早く帰りたがってるこいつら怪しくね?

タクミ   は?

大松       なあ柳瀬?

柳瀬       ん?

タクミ   てめえ、どういうことだよ!

大松       悪かったって!突発的に切れすぎなんだよ!

タクミ   加子!早く行こうぜ!

 

              加子が手を挙げる。

 

加子       わたし、不審な動きしてた人知ってます

茂木       ホントですか?どなたでしょうか?

加子       あの人です(大松)

大松       は?おれ?

加子       あの人この映画館来たからずっと私たちのこと睨んできてたんです

大松       いやちょっと待ってよ、何言ってんの?

茂木       睨んでた?どういうことですか

大松       いやいやいや、チケット探してただけっていったじゃん

茂木       チケット探してた?

大松       ちょうどこの人たちがいたところにチケット落としちゃって。でもこの人たちいるから取りにくいなーって。だから見てたんすよ

梶          それは言えばよかったんじゃ?

大松       まあ確かに

他          ・・・

大松       え、ちょっとまってなにこの空気?てか、これパンフレット盗まれたのと関係なくね?

茂木       結局チケットはどうされたんですか?

大松       そこで拾う前に清掃の人に持ってかれたんだよ

加子       それもほんとなの?

大松       あんたが言ったんだろ!

加子       私はいたよってのを言っただけで

梶          じゃあ影山さんに聞くのが早いすかね

茂木       そうみたい

大松       影山さん?

茂木       うちの清掃担当してくださってる方です

梶          呼んできます!

 

              梶、はける。

 

茂木       少々お待ちください

 

              梶、影山イン。

 

梶          連れてきました

茂木       お待たせしました

茂木       はや!   大松       早すぎるだろ!

影山       はい、なんでしょうか

茂木       今日、影山さん清掃されたときにチケット拾われたりとかはしました?

影山       チケット?そんなのいっぱい拾うよ!床に捨ててっちゃう人ばかりだからね。ほんと困っちゃうよね。まあでもそういうゴミが無くなったら僕の仕事無くなっちゃうからそれはそれで困っちゃうよね!はは!

大松       よく喋るなこの人

茂木       場所はどちらでしたっけ?

加子       このあたりです!

茂木       影山さん、あそこでチケット拾われたりとかは?

影山       あの観葉植物のところ?ああ確かに拾ったよ拾ったね。でも拾ったというより引き抜いたという表現の方が正しいかもね!なんせ植木鉢の下に挟まってたからね!結構しっかりと挟まってたんだよ!だからこう引き抜いたんだよね!まるで巨人が丸を引き抜いた時みたいにね!・・・これは全然よくない例え

大松       1聞いたら12ぐらい返してくるな、てかうるさ!

影山       まあでもこれでチケットはほんとに落ちてたってことですね

加子       ・・・

梶          チケット落としただけで挟まります?あとふつうチケット落とした瞬間拾いませんか?

茂木       たしかに

加子       なんか怪しい

大松       は?

影山       確かに人工的に挟まっていた感じはあったな・・・

大松       いやたまたま挟まったんでしょ

タクミ   わかった。じゃあもう一回試そ!それでほんとに挟まんのかわかんじゃん!な?

全員       ・・・

大松       な?

加子       え、たくみくんどういうこと?

タクミ   いやもう早くレストラン行かなきゃ、予約の時間迫ってるし

加子       それはそうなんだけど

タクミ   だから試そって

加子       なにを?なに言ってんのか全然わかんないんだけど

タクミ   いやもういいよ、見てりゃわかるって、なんかチケット・・・あ、あった(自分のポケットから出す)

 

              タクミ、観葉植物の近くへ

 

タクミ   じゃあ(チケットを上に掲げる)

梶          あ、実際にチケットを落としてみて植木鉢の下に挟まるかどうか試すってことか!・・・言えよ!

タクミ   行きます!あ、落としちゃった!ひらりひらりひらりひらりひらりひらりひらり

 

タクミ、チケットが波打ちながら落ちる様を再現し、植木鉢にチケットをぶつけ、チケットは折れる。

              それを掲げて、

 

タクミ   チケット、入りません!

一同       おお

大松       なんだよこれ!

加子       これで一段と怪しさが増しました

大松       は?

茂木       えー、

大松       ?大松です

茂木       大松さん、率直に聞きます。パンフレット盗んでませんよね?

大松       まじで言ってんの?おい柳瀬!お前からも何か言ってくれよ!

柳瀬       え、おれ?

茂木       あれ、そういえば柳瀬さん?

柳瀬       はい?

茂木       確かご友人のチケットを預けたいときましたよね?

柳瀬       はい

茂木       そのご友人はこちらの大松さんでよろしいですか?

柳瀬       ・・・はい

茂木       いつ頃チケット渡されたんですか?

柳瀬       それはあなたにチケット預けられますかと言った後に

梶          じゃあそれを言った後に大松さんにチケットを渡したと。それでそのあと大松さんはあそこでチケットを落とした。それで、あ、チケット落としたときは結局なんでしたっけ?気付かなかった?

大松       まあはい

梶          それでどうしたんですか?

大松       いったん違うとこ行ってて戻ってきたらあのカップルがいて

梶          それはどこに?

大松       いったん外にかな

影山       んーそれは違うかな。その大松さんという方は今日はまだ一回しかこの映画館の扉を通ってないよ、僕のこの目をかいくぐらない限りはね

大松       え

梶          それじゃあ外に出てったってのは嘘になりますね、ほんとはどこに?

大松       は?いや、さっきからなんなんだよ、なんでこの人が言ったらウソになんだよ

梶          この人は清掃のほかに劇場入り口のとこに待機して来場者の様子を確認してるんですよ。通称見開きの影山さん。目を見開いてチェックしてるからですね。特に今は監視カメラも壊れてるんで大変重宝しています

大松       見開きの影山・・・

梶          それでほんとはどこに?

大松       あ、思い出したトイレだったかな

梶          トイレ?

影山       トイレなら入場口横だからわからないな

加子       え、でもこっちから来ませんでした?

タクミ   確かに

梶          大松さん、ほんとうですか?

大松       ・・・わかったよ!なんだよ!なんでこんなに追い詰められてんの?もういいよな?柳瀬?

柳瀬       え

大松       ほんとは、ほんとは柳瀬にチケットを隠してもらってたんですよ、あそこに。今日遅刻しちゃったんで、でもこいつは予告から見たいやつなんですよ。だからチケットどっかに隠したら先に入っていいよって。おれそこから取るからって。で、いざきたらほんとにチケット隠してあったけど、このカップルがいたからどかねえかなーって思ってたんです!はい、全部言いました!

全員       ・・・

茂木       柳瀬さん、ほんとうですか?

柳瀬       はい

梶          ・・・確かにこれなら全部説明は通りますね

茂木       うん

加子       なんでそれ早く言わなかったんですか?

大松       だってそりゃまあなんかやっちゃいけなさそうじゃん

加子       たしかに

 

              柳瀬、大松以外が大松を見る。

 

大松       え、まだ怪しんでんの?

柳瀬、大松以外   ・・・

大松       わかったよ!じゃあもう見ろよ!ほら!!

 

              大松、持っていたカバンを広げ中身を見せる。

 

大松       パンフレットなんて入ってないからよ!ほら!

 

              大松が鞄を投げ、梶が受け取る。

 

梶          え、これ・・・すみません(鞄の中身を見る)たしかにパンフレットは入ってないですね。わかりました、すみません変に疑ってしまって。申し訳ございません

茂木       申し訳ございませんでした

影山       (一礼)

大松       返してください

梶          ああ、すみません(鞄渡す)

大松       おれはあの二人が怪しいと思います

加子・タクミ       はあ?

大松       この中に万引き犯いるんすよね?無駄におれ追い詰められてむかついてるんで絶対そいつ許さないです。そしておれが怪しいと思ってるのはあいつらです

タクミ   てめえなに言ってんだよ!

大松       じゃあバッグん中見せろよ!

タクミ   あ?

大松       見せてみろよ!

加子       え、何言ってんの?

タクミ   だったらそいつから先に見せろよ!

柳瀬       おれ?

大松       柳瀬が盗んでるわけねえだろ!

柳瀬       ・・・

大松       柳瀬、バッグの中見せて差し上げろ

柳瀬       !!

大松       それでおれらの潔白が証明されるからよ

柳瀬       いや・・・

大松       てか、ほんとに盗んだんじゃねえの?さっきから帰りたがってるし、転売目的で盗んだんだろ!

タクミ   お前ふざけんじゃねえ!!!

 

              タクミ、大松に殴り掛かろうとする。

              加子や梶がタクミを止めにかかる。

              タクミは靴を脱いで土踏まずで大松の口を塞ごうとしたりもする。

              茂木や影山はその様子に驚いている。

 

大松       なんでこんな暴力的なんだよ!

加子       根はやさしい人だから!

大松       は?根が優しいなんて人間当たり前だから!表面も優しくしとけ!!

タクミ   ひゃっはー!!

 

              いざこざは続く。

              不意に柳瀬の元にタクミのバッグが来る。

              棚瀬、それを開く。

              すると中から大量のパンフレットが、

 

柳瀬       なにこれ!?

茂木       ?

柳瀬       パンフレットがいっぱい入ってる

全員       !?

タクミ   おい!返せよ!!!

茂木       えー、タクミさん。すみません、下の名前で。これはどういったことでしょうか?いつご購入されたものですか?

タクミ   ・・・こないだだよ

茂木       こないだというのは?

加子       タクミくん、言ったよね?もうやらないって言ってたよね?

タクミ   いや、これは違う

加子       タクミくん!!

タクミ   ・・・

他          ・・・

茂木       ・・・えー、これは一体どういうことでしょうか?

加子       タクミくん、昔からちょっと手癖が悪いとこがあって・・・これもそういうことだよね?

タクミ   ・・・

加子       タクミくん!

タクミ   ・・・いや、まあ、そうだけど・・・

加子       (落胆)

茂木       ・・・お客様?

加子       タクミくん、店の商品盗んで転売しちゃうっていう癖があるんです

全員       !!!

梶          癖とかじゃあないでしょ

大松       予想当たっちゃってんじゃん

影山       まさかの展開ですな

加子       タクミくんが犯人だったんだよね?

茂木       タクミさん?

タクミ   ・・・確かに、確かにおれは今日も盗んだ。でも今日で最後にするつもりだったんだ!いつもおれの手癖の悪さで加子に迷惑かけちまってるし。

梶          手癖の悪さ

タクミ   だから今日を最後に、決意表明としてこのあとレストラン予約したんだ

大松       卒業祝いみたいな?

加子       私、今日レストラン予約したって言ってくれてすごく嬉しかった。私も祝おうとしてたんだもん!ねえ、こないだで最後って言ったじゃん!どうして?ねえどうして!?

タクミ   ごめん!加子ごめん!!

大松       謎の修羅場

タクミ   今日早く映画館着いた時、つい倉庫の扉が開いてて、だからやっちゃった

茂木       倉庫の扉が開いてて?え、倉庫にあったパンフレットを盗んだんですか?

タクミ   はい、倉庫んとこからくすねました

茂木       もう窃盗じゃん!てか、倉庫にあるパンフレットは全部あったんじゃないの?

梶          ・・・

茂木       お昼食べる前に確認してたよね?

梶          ・・・

茂木       何確認したの?

梶          なーんにも

茂木       なんで!

梶          アルバイトなんで

茂木       もう!

影山       とりあえず警察を呼んできますよ

 

              影山、上手へ消えていく。

 

茂木       ありがとうございます!でもまだ万引き犯が分かってないってことだよね

梶          やっぱとりあえず監視カメラになんか映ってないかだけ確認してきます!もし動いてたなら万引き犯映ってるはずなんで!

 

              梶、下手へはけていく。

 

茂木       タクミさん、とりあえずこちらへお願いします。もう少しお話伺いたいです。

タクミ   はい

加子       ・・・

 

              茂木、タクミ、加子、上手へ行く。

              柳瀬、大松、取り残される。

 

大松       おれ、トイレ行きたい。お前は?

柳瀬       おれはいいや

大松       ん

 

              大松、下手へ消えていく。

 

柳瀬       ・・・

 

              柳瀬、唐突に鞄からパンフレットを取り出し、元の場所へ戻す。

 

柳瀬       っしゃああああああああ!!!!!!!!(思いっきりガッツポーズ)

 

              柳瀬、平常に戻る。

 

柳瀬       トイレ!

 

              柳瀬、下手へ。

              舞台上に誰もいなくなる。

              そこに梶が走ってくる。

 

梶          茂木さーん!カメラ映ってた!!(誰もいない舞台上を見て)みんなどこ?

 

              梶、上手へ走り去る。

 

梶          あいつが犯人だー!!!!!