窓の向こうには満点の星空が広がり、部屋には月明かりが優しく差し込んでいます。
観光を兼ねてのお墓参りの帰り道、私は今宿坊に来ています。
都会の喧騒から離れ、ましてや動物の鳴き声も全く聞こえない非日常な山中で精進料理を美味しく頂いています。
そんな時やつを見つけてしまいました。
黒くカサカサ動くやつ。隣の茶室からこちらに入ってきた瞬間を見てしまったのです。いや、宿坊には無駄なものは一切なく、ゴミ箱すらありません。
だからどこかに隠れることなく縦横無尽にやつは走り回っています。
思わず叫びました。
しかしながら声が悲しくこだまするだけ。
どうしよう。
そういえば線香を燃やすためにバーナーを持ってきたのを思い出しました。
そして私はやってやりました。
弾けてしまったやつを外へと放ると、月明かりに照らされた何かが近づいてくるのが分かりました。